十九 ページ21
翔side
ある人物から電話がかかってきた。
翔「…なんだって？
…わかった。ああ。
気をつけろよ…？」
電話を切った。
一瞬で感情が怒りへと変わり、拳を握り締めた。
俺には憎い奴がいる。
殺したいくらい憎い奴がいる。
でも俺以上にあいつは…
雅紀「…翔…ちゃん？」
車の中にいた俺は、慌てて窓を開けた。
翔「ま、雅紀…っ
いつから…」
雅紀「…ご、ごめん。
翔ちゃん来たって思って。
ここで一人はなかなか不安なんだよ…」
車の中で電話していてよかった。
さすがに俺の声は聞こえなかっただろう。
雅紀「仕事の電話？」
俺は車から降り、雅紀と共に別荘に入っていく。
翔「ああ。
仕事で少し。」
雅紀「大丈夫なの？」
翔「まあ、俺が行ってどうにかなる訳じゃないから。」
俺がそう言うと、雅紀は俯いた。
翔「…どうした？」
雅紀は立ち止まってこう言った。
雅紀「翔ちゃん…
俺、やっぱり警察にちゃんと話したい。
これ以上、翔ちゃんや職場に迷惑かけられないし、何より俺…怖い。」
雅紀の手は震えていた。
無理もない。
精神的にきててもおかしくはない。
でも…
翔「…雅紀。
今はまだダメだ。
この事件、何かがおかしい。」
雅紀「…どういうこと？」
俺は雅紀の正面に立ち、彼の肩を両手で掴んだ。
翔「…こないだも言ったように、この事件には、大野以外にもう一人重要人物がいる。
それはわかるな？」
雅紀「…俺を犯人に仕上げようとしてる人？」
翔「そうだ。
だから今お前が警察に事情を話しても、真犯人がお前が犯人だと裏付ける証拠を作っていてもおかしくはない。」
雅紀の目はウルウルとして、今にも涙がこぼれ落ちそうだった。
雅紀「…でも俺っ
もう…こんな逃げ回るのは…」
翔「このままじゃお前が捕まるんだよっ！」
俺は思わず怒声をあげた。
雅紀の体がビクッと動いた。
翔「…悪い。
でも俺が必ず、お前が無実だって証拠を持っていくから。
…心配するな。」
俺は髪をぐしゃっと掻き乱す。
俺は冷静じゃないといけないんだ。
何ムキになってんだ…。
雅紀「翔…ちゃん…？
何かあったの…？」
俺は雅紀の問いかけに答えず、車の元へ歩き出した。
翔「また後で来るよ。」
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作者名：haru | 作成日時：2019年9月12日 21時
