【土方十四郎】きこえますか 2

拉致 ページ49

人影がどんどん遠のいて、豆粒みたいにしか見えない
歩く速度は、父親と合わせないといけないため小走りになり、変な所で足がつまづく


「おい、ちゃんと歩け！」


「ご、ごめ…なさ」


舌打ちがまた鳴る
父親の手を見つめる
あぁ、やっぱり土方さんとちがう



握る力も歩幅も全部、全部



「ここだ、入れ」



指示された場所は、前使われていた長屋だったのだろうか
かなりボロボロになっている



と同時に身体を押され、
体制を取れずにそのまま倒れてしまった



「おい、こいつが例の娘か」


「へぇ、なかなかいいじゃん」





男たちの会話が頭上で聞こえる
でも、どんな内容なのかわからない



「これが成功すれば、楽に生活できるぜ」





「あぁ、こいつを解放したいなら金をよこせって、脅せば俺たちのところにたんまり金が入る」




それで私を…



「いいのかよ、自分の娘使って」



「娘なんて思ってねぇよ
　ただのストレス発散道具」



「うわー、ひでェ父親」




男達と話しながら、私のところにくる
腰を屈めて話しかける



「お前前と比べて、上等なもん身につけてんじゃねーか
　全部真選組が用意してんだろ
　このかんざしも＿」


「ダメｪ！！」


土方さんからもらった、たいせつなもの


それだけは、失いたくない…！！


「返してｪ！」


初めて父に反抗した
ずっと怖くて逆らえなかったのに
無我夢中で、父の手から取り返した




「よかった…」


壊れてない…傷がなくてよかった



「いってぇな…」



あ…


手の甲に引っ掻き傷をつけてしまった


「調子乗ってんじゃねぇぞ！」


反応できず、頬に力を受け止めるしかなかった

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