フラッシュバック ページ14
私は太宰さんと廊下で別れてから踵を返してもう一度あの場所へ戻った。
芥川は意識を失って倒れていた。
胸の下に手を入れ、助け起す。
ズシリとくる重さは私が想定していたよりはよっぽど軽かった。
もしかして太宰さんは食べさせていないのかと不安がよぎったが、
それを搔き消し私の部屋へ運ぶ。
決して体力のある方じゃない私は部屋に着く頃には息がすっかり上がっていたが、
ドサリと彼をベットに寝かせる。
余計な事かもしれないけれど、タオルを濡らして絞って汚れた手や顔を拭いて置いた。
そうして私は書類仕事に励む。
そのうち呻き声が聞こえて振り返ると丁度目を覚ました所だった。
「大丈夫?芥川。お風呂に入るといい。私のベットをこれ以上汚されては困る」
そう言った。
芥川はハッと起き上がり、此処が私の部屋だということに気づきベットから飛び退いた。
その途端バランスを崩して倒れかける。
すんでのところで手で支え、ギリギリセーフだった。
「大丈夫?」
「僕は……上司の部屋の物を借りるなんてできませぬ」
そう言う彼を見て、謙虚だなぁと思った。
太宰さんはこんな儚い彼にあんな仕打ちをしているのかと思うと、可哀想になって来た。
風呂に入らないという彼に上司命令だといい、無理矢理入れる。
引き出しからシャツとズボンを見繕い、手渡した。
渋々風呂に入り、シャワーの音が聞こえて来た処で、私はホットチョコレートを作る。
丁度この前買ったマシュマロがあったので、それを浮かべて風呂から出て来た彼に手渡す。
警戒心が強いのか、中々飲まない彼をじっと見つめ、無言の圧をかける。
やっと飲み出した彼は、目を少し見開き美味しさを示した。
私はベットの下から救急箱を取り出し、
無理やり傷の手当てをする。
打撲、擦り傷、捻挫、切り傷、突き指。
嗚呼、矢っ張り昔の自分と被る。
風呂に入るたび染みるんだよなぁ、此れ。
先刻も痛かっただろうなぁ。
丁寧に、消毒と絆創膏と包帯と湿布を巻く。
最後にぽんっと頭に手を置いて「何かあったら言ってね」と言う。中也さんの真似だ。
でも頭に手を置く時にビクッと躯を硬くしたのが気になった。
日々殴られているからかな。
チクリと胸が痛む。
何か、彼にしてあげたい。
安心してほしい。
……そう思うのはマフィアとして、冷静なAとしては失格だろうか。
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作者名:消月 | 作成日時:2017年11月30日 19時