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彼女は覚えているだろうか。
あの日は、少し風の強い日だった。
───
「きゃー!千切くん、またゴール決めた!」
「イケメンだし、スポーツもできるし、もう完璧じゃない!?」
これが、いつもの光景。
自分の人気とかは、別に気にしたことが無かった。
褒められようが、逆に貶されようが、俺には関係ないことだ。
「千切くん、やっぱ天才だわ!」
「分かる。才能の塊、って感じするよね。」
──あぁ、うるさいな。
何を言われようが知ったことは無いが、騒音が過ぎると試合に集中できない。
チームメイトや監督は特に気にも留めていない。作戦を練るのに必死なのだろう。
「うるせぇな──。」
その瞬間、強い風がグラウンドをそっと撫でた。
しかし、俺の目は、ある女子生徒に釘付けになっていた。
グラウンドを囲う柵に手を掛けて、こちらをじいっと見ている少女。
柵からちらりと見える彼女の美しいロングヘアは風になびいて、春を感じさせるような香りを微かに感じさせた。
「……綺麗だ。」
そいつを見た瞬間、思わず口をついた本音。
今まで見てきた女子の中でも上位を争う美しさだった。
こんなに綺麗な人、生まれてから見たことがない。
──完全なる一目惚れだった。
そこからは、彼女を探す毎日。
学校中を探し回って、時には先輩や同級生にも尋ねた。……少し癪だったが。
彼女について俺は「髪の綺麗な人」という情報しか持ち合わせていなかったため、探すのには苦労した。
そして、ようやく彼女本人を見つけた。
名前を"A"と言うらしい。クラスメイトによると、あまり目立たない地味な子、だそうだ。
俺からすると、彼女は絶世の美女そのものだが。
「失礼しまーす。」
軽く挨拶をして、彼女のいる教室に入る。
入った途端、1人の女子生徒と目が合った。
あの時に出会った少女と同じような、美しい顔立ちと髪だった。
「こん、にちは……?はじめまして、だよね?」
「──千切豹馬。よろしく。」
軽い会釈をして、彼女をじっと見つめる。
初めて彼女を見た時には衝撃を受けたが、真近で見ると尚美しい。
「わ、私、AAっていいます。よろしくね……!」
───
そこからは、たまに話す程度の仲にはなれた……はず。
でも、あの頃からAは先輩の事が好きだったのだろう。
この恋は、きっと叶わず終わるのかもしれない。
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おかいあげ(プロフ) - わわわさん» お褒めの言葉、ありがとうございます😭😭リクエスト、とても嬉しいです……!気長にお待ちいただけますと幸いです🙇♀️ (6月9日 22時) (レス) id: 14fd16cdce (このIDを非表示/違反報告)
わわわ(プロフ) - マジ好きです…!!リクエストで「玲王以外の男子に義理チョコをあげていたら」でお願いします!!恋人設定でお願いします!!あ、お気に入り失礼します!! (6月9日 20時) (レス) id: 25bccbe9da (このIDを非表示/違反報告)
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