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俺は美乃里を風呂場に案内した。
今日はまだ誰も使っていないので、床には水滴1つも無い。
「おぉ……!」
「だから、どうしたんだよ。人ん家の風呂場がそんなに珍しいか?」
「いや、だって。友達のお風呂場なんて見る機会そうそう無いじゃん!」
そう言った美乃里は、どこか楽しそうだった。
髪を切りに来ただけのはずなのに。
「ほら、ここ座れ。あとは……。一応これも被っとけ。折角の可愛い服に髪付けたくないだろ?」
「うん。ありがとう。」
「じゃ、始めるぞ……。」
「──お、やってるやってる。」
「げっ……。」
散髪を始めようとした矢先、扉の開く音と共に厄介な奴が現れた。
どうやらAは状況を理解できていないらしく、フリーズしている。
「あっ、あの……?どちら様でしょうか……?」
「こんにちはー。豹馬の姉でーす。あなたがAちゃん?」
「ひゃ……。は、はい……。」
「豹馬ぁ。この子めっちゃ可愛いじゃん。彼女?私が髪切りたいくらいだよ。」
「別に彼女じゃねぇよ……。つか、集中出来ないからあっち行ってて。」
──まぁ、将来的にはそうなる予定ではあるけど……。
「はいはーい。Aちゃん、また今度ねー!」
「ったく……。」
俺とAは、姉ちゃんの後ろ姿を見送った。
次来たらマジで許さん。
「悪ぃ。びっくりしたろ。」
「あ、ちょっとね……。千切くんのお姉さん?美人だね。」
「まぁ、そんなところだな。ほら、前向け。とっとと切りたいから。」
「は、はい……!」
Aの頭を前に向けて、今度こそヘアカットを始める。
また邪魔が入らないように、風呂場の鍵はキチンと閉めた。
「じゃ、どんな感じがいい?バッサリいくか?」
「うん。千切くんの好きなようにしていいよ。」
「……本当にいいのか?」
「いいってば。早く済ませたいんでしょ?」
そう言ったAの声は、さっきとは打って変わって、どことなく寂しそうだった。
鏡越しに見た顔も、儚げな雰囲気をしていたような気がする。
「……切り始めるぞ。動くなよ。」
手でAの髪に触る。
毛の1本1本が細く、柔らかい。綺麗な髪とは、まさにこの事を言うのだろう。
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おかいあげ(プロフ) - わわわさん» お褒めの言葉、ありがとうございます😭😭リクエスト、とても嬉しいです……!気長にお待ちいただけますと幸いです🙇♀️ (6月9日 22時) (レス) id: 14fd16cdce (このIDを非表示/違反報告)
わわわ(プロフ) - マジ好きです…!!リクエストで「玲王以外の男子に義理チョコをあげていたら」でお願いします!!恋人設定でお願いします!!あ、お気に入り失礼します!! (6月9日 20時) (レス) id: 25bccbe9da (このIDを非表示/違反報告)
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