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紬SIDE
そっか…、俺も自分が死んだことはすぐに自覚したけどこんな非術師がわかるなんて。…呪力込めたからか。
「悲しいか?」
「ううん…、またお父さんたちと一緒にいれて嬉しい。でもね…、思い出せないんだ。お父さんたちとの楽しかった記憶。…何で…なの?」
「…死んだからね。記憶は…本当に大切なものしか受け継がれない」
「私はお父さんたちが好きだよ!?なんで…好きなのに!」
好き…か。でも忘れたってことはそこまで大切じゃなかったってことだ。まだ小さかったからなのかもしれないけど。…失くした記憶は戻らない、二度と。
「大切ということが…、まだ何かわかっていないのかもしれない。…でも、もう二度と君は死なない。だから、また沢山作れるよ。楽しい思い出も」
壊されても俺が作り直すし、あの社長たちの依頼を聞き入れるのは面倒だがこの健気な少女が壊されて見て見ぬふりは出来ない。
「そ…っか。…沢山…作れるんだ」
「悲しまないで、ほら」
俺はメイデンを出した。
「“踊って”」
メイデンは礼菜ちゃんと同じぐらいの身長だ、145cmぐらい。俺が185ぐらい?だからメイデンの大きさは操りやすい。重くないし。
「わぁ…!すごい…。人形師さんは魔法使いなの?」
「ううん、俺はただの人形師だよ。…ちょっとすごい力が使える人形師」
「すごい力?」
「俺の家族はみんな大きな人形を操れるからね」
礼菜ちゃんの悲しい表情は何処かに飛んで、今目の前にあるのは綺麗な可愛らしい笑顔。
「礼菜ちゃん、いい?」
「ん?」
「…礼菜ちゃんの体はもう成長できないんだ、老いない。だから困ることもある。君にこの人形をあげる、これは俺がいる所まで連れて行ってくれる。何かあったらいつでもおいで。…じゃあ、俺はもう行くから。…バイバイ、礼菜ちゃん」
「もう行くの…?」
「俺は人形師以外にも仕事をやってるからね。会いにきたかったら来ていいから」
弱く俺の袖をつかんでいる手を優しく解き、頭を撫でた。少し…妹のことを思い出す。そして俺が小さかった時の兄のことも…。
「あ、そうだ!最後に人形師さんの名前教えて?」
「俺は紬、だよ」
「紬さん!またね!」
小さい子供は好きだ、大人の非術師よりずっと素直でいい子。穢れを知らない。
俺は礼菜ちゃんと別れ、自分の家に戻った。手にあの子のフワフワの髪の毛の感触が残ってる、気持ち良かったな…。
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suffron*(プロフ) - 水野さんさん» コメントありがとうございます!めっちゃ嬉しい感想です!頑張って矛盾が起きないように頑張ります! (2022年8月8日 22時) (レス) id: 8634fbdb13 (このIDを非表示/違反報告)
水野さん(プロフ) - この小説、よく話が組み込まれていてすごい大好きです!これからも無理せず頑張ってください!💪💪💪 (2022年8月8日 21時) (レス) id: 67d79f5597 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:suffron* | 作成日時:2022年8月5日 12時