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紬SIDE
「絡繰は…と聞きたいところだけど覚えてないなら感情なんてなにも湧かないか」
「だな…。湧かないというか湧けないんじゃないか?覚えてないから」
「それもそうか」
教えてもらっても…、詳しいことは思い出せない。少し…、その星漿体の見た目と性格を思い出しただけ。声とか匂い、気配とかは全然。
俺は星漿体の姿を想像した。もうずいぶん昔に失われた命だから魂はこの世に残っていない。…人形に込めることは、出来ないな。
「…少し話が変わるけど、あの子は?…順平。最近会えていなかったからさ。精神状態とか良くなった?」
「吉野のことか。精神状態は前に比べてずっと良くなった、きっとあの時の絡繰の言葉が心に残っているんだろうな」
「そうか…、良かった。…それで?今は何処にいる?」
「五条の所で基礎的なものを学ばせてる。まだ一年の所には入ってない、もう少ししたら入らせるだろうけど」
俺が教えようと思ったのに…。…まぁいいか、五条の授業適当だけど力だけはあるから順平は強くなれる。…はずだ。
…いや、五条は本当にびっくりするほど適当だからな。少し心配だ。
「地下の教室か?」
「多分な」
「少し行ってくる、休ませてくれてありがと。家入」
「何かあったらいつでも来なよ」
「珍しく優し…。…ふっ、じゃあお言葉に甘えてまた今度くるよ。その時は家入の好きな日本酒も持ってくる」
“日本酒”と口に出すと家入は少しだけ表情が明るくなる。俺はお酒をあまり飲めないけど、家入は馬鹿みたいに強い。飲んでも飲んでも全く酔っている素振りがない。水を飲んでいるんじゃないかと思うぐらいだ。
「順平、いるか?」
「絡繰さん!」
前とは違う明るい顔、長い前髪は相変わらずだけど。
「最近会いに行けなくてすまなかったな。後、俺のことは下の名前で呼んでほしい。“紬”とな」
「紬さん!」
可愛らしいな…。
「紬さん!紬さん!」
「なんだ」
「呼んだだけです!久しぶりに会えたからすごい嬉しくて」
…俺に会えることをそんなに楽しみにしてくれる人がいるなんてな。
「五条の授業はどうだ?適当なこと言ってないか?」
「?別に大丈夫ですよ?」
「なら良かった」
順平は頭にクエスチョンマークを浮かべている。微笑ましいなと思いながらいると、一本の電話が鳴った。今日は仕事はないはずなんだけど。
『もしもし、絡繰家の方で合ってますか?』
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suffron*(プロフ) - 水野さんさん» コメントありがとうございます!めっちゃ嬉しい感想です!頑張って矛盾が起きないように頑張ります! (2022年8月8日 22時) (レス) id: 8634fbdb13 (このIDを非表示/違反報告)
水野さん(プロフ) - この小説、よく話が組み込まれていてすごい大好きです!これからも無理せず頑張ってください!💪💪💪 (2022年8月8日 21時) (レス) id: 67d79f5597 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:suffron* | 作成日時:2022年8月5日 12時