５１．頼るため ページ4
華相SIDE
「千冬…」
千「Aさん…、俺…ッ…。ずっとあの人の近くにいたのに…、助けられなかった…っ！」
形容し難い表情だな…。自分が助けられなかったという後悔や絶望の中に、Aちゃんが助けたことで場地が救われたという安心が混ざっている…。
「…殴れないのにどうやって助けるつもりだったの…？」
…！Aちゃんらしくない言葉。優しい顔はしてるけど言い方に棘がある…、珍しい。
千「それは……」
「一人で何とかなると思った？武道がいれば大丈夫だと思った？」
胡「花桐、松野だって相当悔やんでいるはず」
見かねた皐月がAちゃんを止めた。でもAちゃんの口が閉じることはない。
「あの子は…貴方にとってどんな存在？」
千「ッ…！俺にとって…、尊敬している人…。…自分の命よりも大切な人です」
「そうでしょ？…大切な人を守るためなら手段は選ぶべきじゃない。人に頼ることを常に頭に入れなさい、一人で何でもできると思ったら大間違いよ」
Aちゃんは一息ついてからこう言った。
「何のために私たちがいるの？」
千「…！…それ…は…っ」
「頼るため…でしょ」
千「…ッ…はい」
前言撤回…とまではいかないけど、言葉に棘があったのはわざとだ。わざときつく言って千冬に大事なことを思い出させようとした。
Aちゃんはフッと笑い、千冬の頭を撫でようとした。でも間違えて左手で撫でようとしてしまってそのまま固まった。痛みホントに感じてないのか…？
「こっちね」
千「Aさん…、俺を子供扱いしないでください」
「…。ふふっ、１４歳が何言ってるの」
千冬の笑顔が戻ったのと同時に手術中のランプも消えた。無事…成功しただろうか。
医「一命は取り留めましたが、出血量が多く傷が思ったより深かったので目覚めるのが遅くなるでしょう。…ですがこれはまだ良かった場合です、もしかしたら…昏睡状態が続くかもしれません」
医師の言葉で俺たちはまた地獄に堕とされたような気分になった。あの傷で死ななかったことが不幸中の幸いだとでも思ってないと…息が苦しくなりそうだ。
その重々しい空気を断ち切ったのは総長、マイキー。
マ「大丈夫だ。場地はぜってー起きる」
「…信じるしかないわ。ね？千冬」
千「はい…！俺は…ずっと待ってますから」
流石…だな。マイキーの言葉で全員が勇気づけられた。
「先生、ありがとうございました」
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作者名：suffron* | 作成日時：2022年10月6日 16時
