武装探偵社のもう1人【文スト】 (ページ6)

今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:4,936 hit

5 彼ト牢ノ中ページ6

「♪～～ ♪～～～」

男の鼻唄が聞こえて来る

此処はポートマフィアの牢

本来ならば鼻唄など聞こえるはずが無い

牢の中には、両手を囚われた痩躯の飄々とした男が

一人、ぽつんと立っていた

ーーーーーー鼻唄が止まる

刹那、男に黒い＂何か＂が襲いかかる

だが、其れは男に触れた途端に消滅した

「いきなり酷いじゃあ無いか、芥川君」

牢の入口に黒ずくめの男が立って居た

其の不健康そうな男の名は芥川と云うらしい

「お久しぶりです・・・元マフィア幹部、太宰治さ

ん」

囚われて居る男の名は太宰治、と云う様だ

「突然の任務放棄に失踪、とても幹部の所業とは思

え無い」

「君の上司の所業とも？」

「黙れ」

芥川が一喝する

激情を押さえ付ける様な声だったが、先程の様に攻

撃をする事は無い

太宰は驚いた様な顔をした

「へー。君、忍耐強くなったんだね～。前の君なら

直ぐに感情のままに攻撃してたのに」

芥川は一瞬顔を歪ませたが、直ぐに踵を返し出口に

向かい始めた

「太宰さん。貴方は今、水無月医師がマフィア内で

どの様な状況か、ご存知ですか？」

「ーーーーーーは？」

今迄飄々として居た太宰の瞳が揺れる

「まあ、懺悔する機会はもう有りませんが。この牢

に入れられた者の末路は貴方が一番ご存知でしょ

う」

そう言って芥川は立ち去った

太宰が一人、ぽつりと残されて居た