武装探偵社のもう1人【文スト】 (ページ5)

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5 彼ト35人殺シページ5

「本当、色々有ったなぁ」

ぼんやりと回想をしながらも、僕は医務室でカルテ

の整理を始めていた

医務室の扉を開ける時、もしかして鍵が掛かってな

くて、誰かさんが○殺しようとしてないかな、なん

て思ってしまう自分が、もう四年も経ったのに消え

てくれない

私は、案外一途で初恋を忘れられない女々しさが有

ったらしい

『コンコンッ』

控え目にドアをノックする音がした

「どうぞ」

扉を開けて現れたのはーーーーー和装の少女だった

俯向き気味で此方に歩み寄ってくる

「いらっしゃい、鏡花ちゃん」

彼女は一見可愛らしい少女だが、其の実態は35人殺

しの暗殺者だ

今、此方に歩み寄って来ているのに着物の衣擦れの

音がしないのも、其の証拠だろう

初めて僕と出会った時の第一声が、「貴方、医師？

だったら私を、私と一緒に夜叉を殺せる？」だった

し、まあ色々と背負って居る子だ

あっ、後紅葉の姐さんのお気に入り

「今日はどうしたんだ？」

「・・・・・・・・」

沈黙ーーーーーー僕は鏡花ちゃんと目線を合わせる

為に屈んだ

「如何かしたのか？」

「水無月先生・・・太宰治って知ってる？」

「ッーーーーーーーー？！」

知ってるも何も、大切な友人で一応初恋の人だ

でも、如何して鏡花ちゃんがそんな事・・・

「昨日、私は任務で元マフィア幹部の探偵社員太宰

治を捕縛した。其の時に＂ねえ、君。水無月朔夜っ

て云う医師は知ってるかい？＂って聞かれた」

鏡花ちゃんは淡々と答える

其の姿はまるで人形の様で生気を感じ無い

と言うか、鏡花ちゃんが太宰を捕らえに行った、っ

て処までは認識したけど、何で太宰は僕の事を？

「其れで、何て答えたんだ？」

「知ってる。優しい医師だって答えた」

「鏡花ちゃん・・・！」

鏡花ちゃんに優しいって思って貰えて居た事に安心

する

「其れで、太宰は今何処に？」

「牢の中。でも、会いに行ってはいけない」

僕の首元をチラッと見て云う

「分かってるよ？」

僕は態と戯けた声で云った

「今、多分彼の人が会いに行ってる」

鏡花ちゃんの云う＂彼の人＂って若しかして

ーーーーーーーー芥川君？

おいおい、結構やばいんじゃないか？

「本当は、＂知ってる。マフィアに相応しく無い位

優し過ぎる医師＂だって答えた・・・」

鏡花ちゃんの小さな呟きは、僕には聴こえなかった