声ー10 ページ49
五分ほど立ち尽くした後、ナワーブは死体を見つけたと警察へ通報した。その日は家に返され、後日警察署へと呼び出されると詳しい話を聞き出された。
最初こそ、警察はナワーブを疑うような質問をしてきたが、何度目かの呼び出しの際にBの名前を出した途端、警察は顔を強ばらせた。
「実は君が通報した同じ森で、彼は亡くなっていたんだよ」
と告げられ、ナワーブは言葉を失った。
BはDが埋められていた場所から近いところで亡くなっていたらしい。
傍に落ちていたBのバッグからは縄やナイフなどが見つかり、警察はBの家を家宅捜索した。
すると亡くなった被害者の痛々しい写真がPCの中から見つかったらしく、警察はDを殺したのはBだと判断し、ナワーブを容疑者から除外したと言う。
顔色を紙のように真っ白にしたナワーブを気遣いながら、警察はBとのやり取りを尋ねてくる。喫茶店でのやり取りや、その時Bに感じた違和感などを、声を絞り出して何とか答えた。
警察は何度も頷きながら手元の資料を見て、小さく嘆息する。凶器を詰めたバッグの写真を見て、Bはあの日、Dを見つけようとしたナワーブを始末しようとしたのだろう、と警察は語った。
でもね、と警察は言葉を続ける。
「色々と不可解な点が多いんだよね」
どういうことかと尋ねると、Bは撲殺されたそうなのだが、凶器はBの死体の近くに落ちていたらしい。Bの血が付着した鉄パイプが。
「でも不思議なことに、その鉄パイプからはBの指紋しか検出されなかったんだよ」
Bの犯行からして自ら命を絶つとは考えにくい上に、鉄パイプで自ら命を絶つなど聞いたこともない。それにBが殴られた箇所は後頭部で、骨も凹んでいた。頭蓋骨が凹むほどの強さで殴るには、後ろから殴られるしか方法がない。
BとDの2人とはほとんど面識のなかったナワーブの犯行とは思えず、警察はBに恨みを持っている者の犯行として、今は捜査を進めているらしい。
「あともう一つ、これが1番よく分からないんだけど……」
ドクドク、と心臓が激しく脈打つ。
姿を消す前の、Dの柔らかい微笑みを思い出す。
「彼が亡くなったのは君が通報してくれた日のはずなんだけど、見つかった遺体は既に死後数週間は経ってる状態だったんだよね……」
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作者名:モノクロ饅頭 | 作成日時:2023年11月4日 20時