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声ー7 ページ46

「……Dの行方は、警察すらも突き止められてないんだ。君は、彼女がどこにいるのか見当はついているのかい?」

一通り話を聞いて黙っていたBが、ふとナワーブに問いかけてくる。
話し続けたせいで乾いた喉をコーヒーで潤したナワーブは「ただの予想に過ぎないが」と前置きを置いた。

「俺は山だと思ってる」
「へえ、それは何故?」
「さっきも説明したが、夢の中でDが助けを求めてくる時は、必ず土の臭いがするんだ。都会に近いこの町に土がある場所なんて限られてる」
「あぁ……はずれにある山か」

Bがポロリと零した言葉に、ナワーブは頷く。
都会とは言い切れずとも、家やマンション、ショッピングモールがあるこの町で土がある場所は少ないが、町のはずれには広い森があった。
もし、Dが何らかの事件に巻き込まれて殺されたとしたら――。

(埋めるなら、山の方が良いだろうな)

ナワーブは声に出すことなく、胸中で呟いた。
頭の中で、夢で聞いた音が響く。ザク、ザク、という固い音。あれが、スコップで土を掘っている音だとしたら土の臭いがするのも納得がいく。
しばらく考え込むように目を伏せていたBが、口を開いた。

「……それで、君はどうする気だい?」
「Dを探しに行く。あれだけ助けを求められて、無視するわけにもいかないだろ」
「優しいね、君は……なら、ぜひ同行させて。俺も彼女を助けたい」

そう言いだすだろうとは思っていた。ナワーブにBの同行を拒否する理由はないため、頷く。

「なら、今からでも行くか?」
「いや、生憎これから少し用事があってね。夜とかどうかな?」
「……危なくないか?」
「確かに危ないけど、あそこの周辺は警察の見回りの範囲内なんだ。もし見つかって家に帰らされたら面倒だろう?」

にこりと笑うBを、ナワーブはフードの下から見つめる。

「……わかった。なら夜に」
「決まりだね。連絡先を交換しよう」

お互いの連絡先を登録し、その場はBの奢りということでお開きとなった。
また後で、とにこやかに手を振って去っていくBの背中が曲がり角で消えたところでナワーブも歩き出す。
 
(妙な奴だな)

Dを心配して探し回っているという割には、にこやかに笑っていたBの顔の血色は良かったし、目の下に隈があったわけでもない。
Dにぞっこんだったという話が本当なら、恋人を探しているというナワーブを疑って問い詰めてもおかしくないというのに、一瞬でも疑いの眼差しを向けてくることもなかった。

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設定タグ:第五人格 , 黄衣の王 , 傭兵   
作品ジャンル:ホラー
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作者名:モノクロ饅頭 | 作成日時:2023年11月4日 20時

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