声ー6 ページ45
「んで、知り合いがナワーブがDを探してることを彼氏に言っちまったらしくてさあ……」
「は？」
「お前と詳しく話がしたいらしいぜ、その彼氏が」
「おいおい……まさかソイツ、俺が浮気相手とかDを殺した犯人とか考えてねえよな！？」
「いや、それはないと思うぞ？多分……」
明後日の方向に視線を逸らしながら答える親友に、ナワーブはげんなりとした顔で重いため息を吐いた。「まあ大丈夫だって！何か言われたら俺も味方するから！」と親友に励まされても、ナワーブは気が気ではない。
結局、大学が終わってからその彼氏と会う羽目になってしまい、ナワーブはがっくりと肩を落とした。
Dの彼氏に指定されたカフェは町の裏道にある知る人ぞ知る店の様で、店内にいる客の数は夕方でも少ない。恐る恐る店内へと足を踏み入れたナワーブに、奥の席に座っていた男が声をかけてきた。
穏やかな微笑を口に浮かべてナワーブを呼んだ男の向かい席に座る。Dの彼氏だと名乗ったBは、朗らかそうな男だった。
まず自分はDの関係者ではないこと、Dの大学どころか名前すら電柱に貼られた張り紙で初めて知ったことを伝える。次々と捲し立てるナワーブにきょとんとしていたBだったが、すぐに微笑を浮かべた。
「別に俺は君を疑ってるわけじゃないよ。Dは浮気するような子じゃなかったからね」
「じゃあ、なんで俺を呼んだんだ？」
「だって気になるじゃないか。Dと全く面識がないのに、なんで電柱の張り紙を見ただけで彼女を探そうと思ったんだい？」
頬杖を突きながら尋ねてくるBに、ナワーブは口ごもる。
確かにBの疑問はご尤もなのだが、素直に話したら話したで異常者扱いされるような気がして話しにくい。かと言って、ここで話を濁したら確実に疑われる。
どちらを取っても、ナワーブが変な目で見られるのは確かだろう。それでも、疑われるよりは正直に話した方が良いと考え、ナワーブはBを見据える。
「信じてもらえるかわからないが、夢を見たんだよ。Dに助けを求められる夢を」
「……興味深いね、詳しく話してもらっても？」
Bの目の色が明らかに変わり、テーブルの上で手を組んで前のめり気味に食いついてきた。それに一瞬だけ訝しげな顔をしたナワーブだが、すぐに切り替えて事の次第をBに説明する。
今朝の出来事は語らず、数日前から夢の中で度々Dに助けを求められたこと。それに対して自分は何も答えられなかったことを話した。
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作者名：モノクロ饅頭 | 作成日時：2023年11月4日 20時
