優しいと思った俺がバカだったよ ページ39
「ッ……い、ってぇ……」
ハッと意識が戻り、思い切り起き上がろうと動かした身体が強い痛みを訴え、ナワーブは苦痛の声を上げた。
ズキズキと痛む身体を何とか起こし、ナワーブは自分の身体を見る。
床に打ち付けられた際に出来た擦り傷やハサミで切られた頬には絆創膏が貼られていて、違和感を感じる頭に手をやれば包帯が巻かれていた。
身体の痛みが少しずつ治まり、冷静になったナワーブは周りを見回す。
ナワーブがいたのは、自室のベッドの上だった。
「なんで……」
確か自分は、クラスメイトの女と一緒に旧校舎にいたはずだ。
そこで女が化け物の姿に変わって襲われて、それから……。
「目が覚めたか」
「ッ！」
いつの間にか目の前にハスターの姿があり、ナワーブを見下ろしていた。
腕を組みながらこちらを見つめてくるハスターの雰囲気は重く、どこか苛立っているように感じる。
ビクリと身体を跳ねさせたナワーブは、バツが悪そうにハスターを見上げた。
「…………ハスター、その……ごめ」
「良い、其方が悪いわけではない。我も言葉足らずであった」
謝罪の言葉を口にしようとしたナワーブの科白を遮り、ハスターは頭を振った。
「あのような言い方では、其方が反発するのは容易に想像出来たからな」
「……じゃあ、なんで怒ってんだよ」
ナワーブは悪くない、と言いながらもハスターの機嫌は悪いままだ。
その理由がわからず、ナワーブは困惑げに見つめる。
「なに……面倒な奴に借りを作らされてな、それが癪なのだ」
「面倒な奴……？」
「忌々しい奴よ。彼奴の信奉者が其方に目を付けていたのは、彼奴自身も知っておった。その上で、我があの場所へ入れぬようにして信奉者をけしかけて其方を誘き寄せるなぞ……」
「信奉者？あやつ？何の話だよ」
ハスターは黙り込み、ナワーブを見下ろして小さくため息を吐いた。
「そのうち分かる。今は休め」
「ッ、強引に戻すなよ、まだ身体が痛いんだ！」
「そこまで吠える元気があるなら、大丈夫であろう」
ベッド脇に生えた触手によって強引にベッドに寝かされ、身体に痛みが走ったナワーブは顔を顰めて抗議の声を上げる。
ハスターはこちらを睨むナワーブの頭をポンポンと優しく叩いた。
「其方が無事だったのが幸いだった」
「……ハスター」
「依代の其方が死んでは、我も困るからな。其方の身体が頑丈で良かったぞ」
「やっぱアンタ大っ嫌いだわ」
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作者名：モノクロ饅頭 | 作成日時：2023年11月4日 20時
