ずっとずっとずっとずっとずっとずっと ページ36
「私、ずっと見てたわ。あなたのこと、ずっと欲しかったのよ。ずっとずっと、ずっと前から、ずっとずっとずっとずっとずっとあなたのことが、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと」
不気味な程に口角を吊り上げた女が近づいてくる。
恐怖を感じ、ナワーブは後ずさるが女が近づいてくる方が早かった。
ガッと、両肩を物凄い力で掴まれ、ナワーブは痛みに顔を歪める。
「ずっとあなたが欲しかったのに、ずっとずっと欲しかったのに、あなたの、あなたのあなたのあなたのあなたのあなたのあなたのそばには、いつだって」
アレがいた。
女の顔から表情が剥がれ落ち、文字通りの無表情を浮かべる。
灰色だった目は一寸の光も通さない真っ黒な目に変わり、ナワーブの顔を覗き込んだ。
「だから、だからあなたをあなたをここにここにここに呼んだ。呼んだのよ、呼んだ。アレは、アレはアレはアレは、ここには来れないから」
「っ、ぅ……」
アレ、とはつまり、ハスターを指しているのだろうか。
なら、立ち入り禁止テープを潜った時に聞こえた、あの千切れたような音は。
ギリギリ、と女の指が肩にくい込み、ナワーブは苦痛で呻き声を上げる。
「ああ、ああ、ああ、嬉しい、嬉しいわ、嬉しい嬉しい嬉しい嬉しいのよ。私、私私私わたしわたし私私私私私私私わたし私私」
ボロボロ、と女の顔が崩れて行く。
土のような塊になって、女の顔が落ちる。
そこには、無数の目と口がひしめき合っていた。
真っ黒な窪みの中で、ぎょろぎょろと動く無数の目。
ガチガチと歯を鳴らす口や、ギャハギャハと笑い声を上げる口。
「あ な た、のメ 、が 欲し、ぃ わ」
ナワーブは渾身の力で、女の右頬を殴り飛ばした。
殴られた拍子にグルン、と女の首が捻れて真後ろを向く。
肩に置かれていた手の力が緩み、ナワーブはその両手を振り落として距離を取った。
「い、 た ァ 、い」
捻れていた皮膚を回し、女の首が真正面へと戻る。
窪みの中から目玉がポロポロと落ち、抜け落ちた歯がカツンカツンと床に音を立てて落ちた。
ナワーブは弾かれたように走り出し、廊下を駆け抜ける。
一直線上の廊下を走り、裏口の扉へ急いだ。
もう少しで裏口に辿り着く、というところまで来た時、頭上から音がした。
咄嗟にその場から後ろに下がると、女が天井から落ちてくる。
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作者名：モノクロ饅頭 | 作成日時：2023年11月4日 20時
