なんで ページ30
翌日、朝食はいつものように用意されていたが、ハスターの姿はなかった。
静かな部屋で朝食を食べ、暗い気持ちを抱えながら大学へと向かう。
太陽の光に照らされ、アスファルトに映し出された影を見つめる。影はいつものようにナワーブの形をしていて、それが変わることはない。
それでも、影に向けられたナワーブの視線をハスターは感じ取っているだろう。
何となく、気まずいと思った。
大学内へと入り、重い足取りで教室へ向かっていると背後からバタバタと慌ただしい足音が聞こえてきた。
「ナワーブ！」
「っ……」
駆け寄ってきたのは親友で、ナワーブは言葉に詰まる。
何を言われるのだろうか、と怖かったのだ。触手だけとはいえ、親友にハスターを見られてしまったから。
目の前まで走ってきた親友は、肩で息をしながら呼吸を整えている。
「なあ……、その」
「悪い、ナワーブ！昨日、�犲鬚某譴辰寝兇魏箸泙覇呂韻討�れた″んだろ！？」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
呆然とするナワーブを前に、親友は申し訳なさそうな表情をしている。
「まさか酔いつぶれるとは思わなかったんだよ〜！あれでも量は控えたつもりだったんだけどな〜？」
重かっただろ？俺を運ぶの。
ナワーブは、何も答えることが出来なかった。
背中には冷や汗が流れ、心臓はバクバクと激しく脈打っている。
金魚のように口をパクパクと開閉させたナワーブは、声を絞り出すように言った。
「……昨日、廃墟に行かなかったか？」
「え？廃墟？行ってねえよ、俺らでいつもの店に飲みに行っただろ？」
「だって、確かに××町の廃墟に……」
「んん？何言ってんだよ、ナワーブ」
××町に廃墟なんてないだろ。
視界が真っ白になったような気がした。
カタカタ、と身体が震える。
「うわ、お前大丈夫か！？顔色すっげえ悪いぞ！？」
心配げに顔を覗き込んでくる親友の腕を、縋るように掴んだ。
「なら、Sは！？MやR、Eはどうしたんだよ！？」
震える声で親友に問いかける。
いきなり腕を掴まれた親友は驚いていたが、すぐに困惑気な顔をして、首を傾げた。
「誰だそいつら、ナワーブの知り合いか？」
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作者名：モノクロ饅頭 | 作成日時：2023年11月4日 20時
