やっぱりろくなことにならなかった ページ27
二階の階段を上がりきった途端、ずしんと身体が重くなったような感覚がした。
冷や汗が流れる。
ここはヤバいと、ナワーブの直感が告げていた。
隣にいる親友を見ると、彼もどこか顔色が悪かった。
「おい、大丈夫か」
「あ、あぁ。わりぃ……なんか、上がってきた途端に気分が悪くなって」
どうやら霊感とやらに疎い親友までもが、影響を受けているらしい。
益々、ここは危険な場所なのだと理解した。
もういっそ、S達に言って自分と親友はここから離脱した方が良いのかもしれない。
「あ、やっと来たのか。おせーよ」
廊下の奥からSが歩いてくる。
Sはケロッとした顔をしていて、ナワーブと親友の顔を見るなり首を傾げた。
「なんだお前ら、大丈夫か？」
「……正直、しんどい」
「だろうな〜。顔色悪いし。でも、ちょっと見てくれよ、気になるもの見つけたんだ」
こっち、と奥の廊下へ戻っていくSに、ナワーブと親友は顔を見合わせてため息を吐いてから、重い足を動かしてついていく。
ついていった先にはM、R、Eの三人が佇んでいた。
ナワーブと親友が追いつくと、三人が一斉に振り返る。
「ねえみて」
Mが指さす方向を見たナワーブは、目を瞬いた。
そこには、ぽつんと一つだけ扉があった。木製の、珍しいドアノブ型の扉である。
なんだか、寒気が増したような気がした。
「おかしいのよね、こんな所に扉とか」
「なんでおかしいんだ？」
Rの言葉の意味がわからない親友が、首を傾げる。
それにEが答えた。
「この家の間取りを考えるとね……ここに扉なんて無いはずなの」
「なんだそれ、設計ミスか？」
「そんなん、私達がわかるわけないじゃん」
冷や汗が止まらない。
ナワーブは、目の前の扉が怖いと思った。
『逃げよ、ナワーブ』
ハスターの声が響く。
ガチャ、と音が響いた。
ドアノブが、一人でに回ったのだ。
「え、今、動いて……」
Sが言った瞬間、ハスターの張り上げた声が脳内に響き渡る。
『早う逃げよ、ナワーブ！一瞬で連れて行かれるぞ！』
バンッ、と荒々しく開かれた扉の先には―……。
一寸の光もない闇がそこに広がっていて、無数の腕がナワーブ達に向かって飛び出してきた。
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作者名：モノクロ饅頭 | 作成日時：2023年11月4日 20時
