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好きでこんな目に遭ってるわけじゃない ページ22

ナワーブは足元を見ながら帰路を歩く。
クラスメイトの男が死んだ。
その事実は、ナワーブに重く伸し掛る。

「ナワーブよ。其方のせいではない」

まさにナワーブが望んでいたような言葉を、ハスターは言う。

「アレはあの男の運命(さだめ)よ。巻き込まれた其方が背負うような(ごう)では無い」

わかっている。わかっているはずだ。
それでも、とナワーブは考えてしまう。
あの時、あの部屋で怨念を消すか、祓えることが出来たなら。

「無理な話だ」

ナワーブの考えを、ハスターは否定する。

「アレは想いが強すぎた。消すことが出来たとしても、アレは再び姿を現し、其方ではない誰かを連れていったであろうな」

祓うことはそもそも我は専門外ぞ。
ハスターが呆れ気味に言う。
車通りの多い交差点に着く。様々な車が行き交う光景をぼんやりと眺めていると、斜め前に見覚えのある姿があった。
それは、あの男と付き合っていた女だ。ブツブツと何かを呟いている。その顔色は青白く、ろくに眠れていないのか濃い隈がその目元に出来ていた。
思わず、ナワーブは女に手を伸ばす。
だがその手は届かず、彼女は、交差点の中へと飛び込んで行った。


穏やかに微笑んで、涙を流しながら。


響き渡る悲鳴と怒声をBGMに、ナワーブは呆然とその光景を見つめていた。
彼女から流れ出た赤いソレは、ナワーブの足元にまで飛んできている。
彼女は、何を想って飛び込んだのだろうか。





その日、ナワーブは夕食を取らずに風呂に入り、ベッドへと潜り込んだ。
目を閉じれば、彼女の最期の姿が瞼の裏に鮮明に浮かび上がる。
目を開く。節くれだった手が、己の頭をゆっくりと撫でる。

「……アンタと出会わなきゃ良かった。今も、あの荘園にいた頃も」

ピタリ、と頭を撫でる手が止まった。
何も言わず、ただ頭に手が添えられている。
このまま潰されるのだろうか、とナワーブは思う。
だが、やがて動きを再開した手は、またゆっくりと頭を撫で始めた。

あぁ、この存在が憎いのに。
頭を撫でる温もりを、ナワーブはついぞ振り払うことが出来なかった。

嫌な予感→←そういえば……



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設定タグ:第五人格 , 黄衣の王 , 傭兵   
作品ジャンル:ホラー
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作者名:モノクロ饅頭 | 作成日時:2023年11月4日 20時

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