何故か ページ18
「なあ、ハスター。聞きたいことがある」
星が煌めく夜。
テレビで流れているのは数年前に流行ったスプラッタ映画である。飛び散る血飛沫と画面の中から響く悲鳴の中、ナワーブはポップコーンを深淵の中へと放り込んでいる邪神へ問いかける。
「なんだ、申してみよ」
「ココ最近の出来事のこと」
そう言えば、深淵から覗く赤い瞳がぎょろりとナワーブを捉える。
その瞳はそのまま言葉を続けろと催促していた。
「アンタに出会ってからの数日間、あまりにも不可解なことが続いてる」
ハスターは何も言わず、ただナワーブの言葉を聞き続けている。
ハスターが自分に取り憑いたと知った翌日、サラリーマンに取り憑く霊を見た。
そして、クラスメイトの男の件。
それだけではない。
家を出れば、外は霊で溢れている。
数日前に住人が去った空き家の、２階の窓から外を見つめる片腕のない子供。
工事をしているビルから、何度も飛び降りる影。
近場のカフェにいた女の足にしがみつく、血だらけの男。
ハスターと出会ったこの数日間で見かけた、いわゆる怪奇現象というやつは数え出せばキリがない。
ナワーブは元々、視える体質では無かったのだ。ハスターと出会う前までは。
「アンタ、俺に何をした」
目を細めて睨みつけてくるナワーブに、ハスターは暫しの沈黙の後、話し出す。
「其方が視えるようになったのは我の影響だ。其方は、元から視えやすい体質だった故にな」
「視えやすい？俺はこの生きてきた20年間、一度もこんな経験無かったんだぞ」
「それは其方が本来持っている警戒心のせいよ」
曰く、ナワーブは最初から霊は視えやすい体質だったが前世からの警戒心が引き継がれ、無意識に�猯遒鮖襪�"ということを回避していたらしい。
だが、ハスターという邪神を身体に受け入れてから、警戒心が働いていても�狄�"を宿した身体では、どう足掻いても視えてしまうのだとか。
「疫病神め……」
「その言葉は不敬に値するぞ」
「ホントのことだろーが」
俺は取り憑く許可なんてしてねぇよ、と悪態ついて無くなった飲み物を追加しにナワーブは席を立つ。
「……我は働いているのだがなぁ」
ハスターは窓を見やる。
小さな正方形の窓に、おぞましく蠢くナニかがそこにいる。
「アレが視えてしまっては、さしもの傭兵も精神が狂うものよ」
邪魔だ、と指をパチンと鳴らせば、破裂音と共に小さな悲鳴が聞こえた。
Happy Halloween→←巻き込んできたのそっちだしな
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作者名：モノクロ饅頭 | 作成日時：2023年11月4日 20時
