鶴の照れ隠し。【鶴房汐恩】

《１８》 ページ18

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木全「へぇー…祥生と偽カップルね…」




HRの時間、翔也に朝練の流れを説明すると
ぽかんとしたまま繰り返した。


うまく飲み込めてなさそう。



隣の席の汐恩は完全に興味がないようで、
普段は一切見向きもしない国語の教科書を熟読してる。

失礼な奴め。





木全「なんというか、壮大になっちゃったね」

「ほんとねぇ。皆様にご迷惑をかけてしまったよ。
菓子折りでもしなきゃ」

木全「汐恩は良かったの？」




私のボケをスルーして翔也が汐恩に聞く。


汐恩は国語の教科書から目線だけ上げて
「あ？」と聞き返した。


なんてガラの悪い子。

お母さん心配だわ。



翔也はもう一度「だから、…色々良かったん？」と
聞き返す。




鶴房「何が？こいつが誰と付き合おうが俺に関係ないやろ」

「いや少しは興味持てよ」

木全「汐恩…」

鶴房「俺は今1限の2次関数の予習しとんねん。
しょうもない話に巻き込まんといて」





ん？





「汐恩、それ国語の教科書でしょ？」

鶴房「は？…あ」

木全「あと1限は数学じゃなくて科学ね」

鶴房「………」

「えっ大丈夫？ポンコツすぎない？振られた？」

鶴房「うっせぇ！振られるわけないやろこの俺が！」

「いやアンタ中学の時に『私のこと好きじゃないでしょ』
とか言われて振られてたじゃん」

鶴房「チッ」

「えええぇ〜…」






理不尽にブチ切れた汐恩はでかい舌打ちをして
いきなり立ち上がったかと思うと

廊下へ出ていってしまった。



もうすぐ1限が始まるというのに。





前の席に座る翔也は心なしかしょんぼりとしてる。








「反抗期かねぇ…やあねぇ…」

木全「あんなキレてるとは思わなかった…」

「いやどう考えても翔也は悪くないよ。
なんかアイツ朝から不機嫌でさぁ」

木全「うん…なんとなく分かるけど…」







汐恩が不機嫌な理由はよく分からない。


たぶんお腹が痛いとかそんなんだろう。



…ポンコツになってるのもよく分からないけど。


あそこまでわかりやすく天然ボケしてるのは
とても珍しい。









「あっそういえば見てみて
祥生のアカウント“ダーリン♡”にしといた」

木全「なにノリノリになってんの」

「仮とはいえ彼氏ができたから楽しむべきかなって」

木全「祥生は？」

「いつもどおり『きっしょ』って言われました」

木全「Aってタフだよね」

「おかげさまでね」









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