可愛い幼馴染はもういません。【川西拓実】

7話 ページ7

.





会社のロビーにて。


拓実から「終わるまで待ってて」と
連絡が来ていたので、

他の仕事の作業をしながら時間を潰している。


個人事業なので一人でスケジュール整理して
間に合わせなきゃいけないからちょっと大変。

けどデザインの仕事は楽しいから充実はしてる。




「…あれ？」




飲み物で一息つこうかと席を立ったとき。


会社の入り口によく知る人物が立っていた。


向こうは誰かを待ってる様子。



どうしたのかと声をかけに行こうと思ったけど、

すぐに知らない女の子が駆け寄っていった。


彼(・)はその女の子の肩に手を回して
どこかへと連れて歩いていく。






「…………え？」





目の前で起こった数秒の出来事に
頭が追いついてくれない。



彼は、間違いなくお付き合いしている恋人だ。


誰かを待ってる…私に用があるのかと
思ったのに、迎え入れたのは全く知らない女の子だった。


私の会社の人…と言っても、
契約フリーターに関わる人間なんて数人。

どこの部署の誰かもわからない女の子だった。

どこか行くなら連絡くらいくれてもいいのに。

今日は二人でご飯でもと思って、


いやてか、え？




「嘘でしょぉ…」




真登間A。

人生で初めて浮気をされた。

そしてその現場を目撃してしまった。



ていうか私がいる会社の人間と
よく浮気できたな。


あーでも今日出社してるとかは
伝えてなかったから…。




今すぐにでも電話しようかと思ったけど、
何を聞いても虚しくなりそうで。

そもそも着信拒否されたら
ショックで立ち直れそうにない。


それに電話ならどんなかわし方でもできる。


話すのは、今日じゃない。たぶん。





「もしかしたら元同級生で久々に
会って話そうってなったのかも…うんそれだ…」



いや、元同級生の異性と肩組む？組むか普通？

私は組めないけど。





なんて、頭を抱えていると…







「なにしてんの？」

「……拓実ぃ」




お仕事終わりらしい拓実が

少し離れた場所で眉をひそめて立っていた。



そんな不審者を見るような目で見なくても。




「仕事行き詰まってんの？」

「いや、なんでもないよっ」

「嘘つくとき、両手の動き速くなるよな」

「うっ」

「幼馴染舐めんな」








そう言うなり口の端を少し上げて不敵に笑う。



さすがたっくんです。敵わない。









「でも、まぁ、大したことじゃないんだ」


「…あっそ」




.

8話→←6話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す