17話 ページ17
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次の月曜日。
佐藤くんがパン屋に来ることはなかった。
そりゃそうだ。
私があんなことを言ってしまったんだから。
それでも、彼の姿を待つ私は何を期待しているんだろう。
火曜日。
水曜日。
どんどん日が過ぎていく。
ゆっくり、ゆっくりと。
彼がいないだけでこんなに1週間が
長く感じてしまう。
連絡も確認してしまうけど、
あの日からLINEが来ることはなくて。
木曜日。
夕方、もう一人のアルバイトの男の子が
久々に出勤になった。
「やっと開放された〜」と伸びをしていたので
彼もテストだったようで。
佐藤くんは、ちゃんと問題解けてるだろうか。
___俺、割と本気だよ
彼の傷ついた顔と、掠れた声。
最後に見た佐藤くんは悲しそうに笑ってた。
私は、本当に佐藤くんのことを
考えることができたのかな。
高校3年生で、これからたくさんの選択肢を
選ぶことができる彼にとって、
私は邪魔になると思った。
人から好かれるであろう彼のことだから
この先私じゃなくてもいいと思った。
…全部、私のエゴだったのかもしれない。
カランコロン、と扉が開くたびに
私は背の高いあの姿を探していて
答え合わせをするたびに期待を裏切られている。
どうしてこんなに彼のことばかり
考えてしまうんだろう。
もう会うことない人のことを
いつまでも考え続けるなんて、不毛じゃないか。
私は彼を傷つけてしまった。
彼を待つ権利なんて無いというのに。
忘れようとすればするほど、
佐藤くんと話したこととか、
彼の笑顔が消えることはなくて。
____アイツのこと見てあげてください
私は、彼のことをちゃんと見れていなかったのかな。
……見れてなかったんだろう。
その結果がこのザマだ。
私はこの日の帰り道、
初めて一人で少しだけ泣いた。
おちゃらけた彼の笑顔を思い浮かべるだけで
胸が締め付けられて苦しかった。
金曜日。
彼の姿は無い。
早く諦めてしまいたいのに、
体はずっと佐藤くんのことを待っている。
男子「Aちゃん?もうあがるよ?」
「……うん」
お店の締め作業をどんなにゆっくりにしても
_____やっぱり彼は来なかった。
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Shiu(プロフ) - tomo102030ytnさん» わわわ…!作り手として光栄すぎるお言葉をありがとうございます…!!そんなふうに思っていただけて作れてよかったなぁとあらためて思います(;_;)続編がんばりますね!また読んでもらえたら嬉しいです(*´∀`*) (2021年9月10日 21時) (レス) id: 3e168f23de (このIDを非表示/違反報告)
Shiu(プロフ) - かんさん» 最後まで読んでくださりありがとうございます!胸キュンしてもらえたみたいでとてもうれしく思います(*´∀`*)こちらこそ温かいコメントをありがとうございました!! (2021年9月10日 21時) (レス) id: 3e168f23de (このIDを非表示/違反報告)
Shiu(プロフ) - いちごだいふくさん» いつもお話読んてくださりありがとうございます!褒め言葉のオンパレードにニヤニヤが止まりません…(*´∀`*)温かいお言葉本当にありがとうございます!とても励みになります(;_;)!! (2021年9月10日 21時) (レス) id: 3e168f23de (このIDを非表示/違反報告)
tomo102030ytn(プロフ) - コメント失礼します。佐藤くんのお話凄く面白かったです!!!他の作品もですが全ての作品を読みたい!!!と思わされる作品で感動しております。続編も楽しみにしています!!! (2021年9月10日 20時) (レス) id: cbe5d57ce7 (このIDを非表示/違反報告)
かん - すてきなお話ありがとうございます! テンポよくお話が進んでいくのであっという間に読んでしまいました!けいごくんこ甘々なところ毎回最高に胸キュン回でした!! (2021年9月9日 22時) (レス) id: 00b03b7ef4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Shiu | 作成日時:2021年8月12日 23時