拝啓、純銀の貴方へ −弐−

第五十二訓「ここでは春なんだよ！！ なんか文句あっか！！」 ページ2

「いや待て待てマジでちょっ、漏れるから先トイレに……」

「漏らしても良いから侍ならつべこべ言わず早よ食わんかい！！」

「いや、良くねェから！！ 色々大事なモン失うからあっ、ちょっ待っ、ゴフッ！」

結果、トイレ行く振りして逃げる作戦は無理でした。
口の中に黒い塊を無理矢理口に突っ込まれた瞬間、甘い辛い塩辛い苦いの複数の味覚が結の舌に襲い掛かり静かに昇天しながら咀嚼する。

それを横目で見ながら神楽は「これを食べないと私は死ぬんだ」と暗示をかけながら咀嚼し続けていた。神楽、確かに常日頃食べ物は大事にしろと言ってきたがこれは良いんだぞ……と結の視界がぼやけていく中「ガハハハ」とこの場にそぐわない笑い声が響く。その場に居た4人が一斉に声が聞こえた方へと眼を向けた。

「全くしょーがない奴等だな。どれ、俺が食べてやるからこのタッパーに居れておきなさい」

何故お前がここに居るんだ 近藤(ゴリラ)。
そう思った瞬間、ドパンと吹っ飛んだゴリラの身体。ぶん殴ったお妙はすぐさま馬乗りになりそのまま顔面を執拗に殴り続ける。


「オイオイまだストーカー被害になってたのか。町奉行に相談した方がいいって」

「いやあの人が警察らしーんスよ」

「世も末だな」

そう言いながらケホッと軽くせき込みながら身体を起こすと後ろから「悪かったな」と低い声が聞こえた。後ろを振り向くとガラの悪い男、男、男。こんな光景を見たら子供は泣きだして逃げるだろう。「この人たちは悪い人から護ってくれる警察なんだよ」と言ってもきっと信じてもらえない。だって顔が怖いもの。

だがこの銀髪にそんなものは通じない。

「オウオウムサい連中がぞろぞろと。何の用ですか？ キノコ狩りですか？」

「そこをどけ。そこは毎年真選組が花見をする際に使う特別席だ」

「どーゆー言いがかりだ？ こんなもんどこでも同じだろうーが。チンピラ警察２４時かアンタ等！」

「同じじゃねぇ。そこから見える桜は格別なんだよ。なァ、みんな？」

そう言いながら他の連中に同意を求めるが周りの意見は『酒が飲めるならどこでも良い』。それを見た結はふふんと鼻で笑った。


「全く風情の欠片も無ェ奴等だぜ。そんなんで『ここから見える桜が格別』とかよく言えたな」

「うるせェェ！！ ホントは俺もどーでもいーんだがテメーの為に場所変更しなきゃならねーのが気に食わねー！！」

「ガキかよアンタ」

「テメーにだけは言われたくねェよ！！」


どっちもどっちだよ。

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