温かい家族. ページ34
. Aside
午前の部が終わり、昼休みの時間
みんな続々と席を立ち、家族とご飯を食べるため移動していた
見に来てくれる知り合いはいないから、応援席で食べようかな
「譜久村さん、今日誰か来てはんの?」
「えっ?来てないけど」
「俺のおかんがさ、むっちゃ持ってきてんねん。食べきれへんから、一緒に食べてくれへん?」
重岡くんの家族と一緒にご飯なんて……
「大丈夫やで、流星と神ちゃんも一緒やから」
「俺らの親、仕事やから来られへんねん。な、流星」
「おん、土曜日は書き入れ時やからな。それに、しげの家族おもろいで」
「譜久村さん、一緒に行かへん?」
私が固まっていると、次々に声を掛けてくれた
神山くんと藤井くんは大丈夫だろうけど
私なんかが一緒に食べていいのかな?
「俺のおかんに、譜久村さん紹介したいねん」
「えっ?」
「新しくできた、その……“友達”やって」
そう言って、はにかむように重岡くんは笑った
純粋に嬉しいし、照れる
何年ぶりだろう、胸がじーんと温かくなるこの感じは
「譜久村さん、あかん?」
「ううん、えっと……お願いいたします?」
「おう、任しとけ」
お弁当を持って、4人で重岡くんの家族のもとに向かった
───
「もう、大毅遅いやないの……あら、女の子連れてきてどないしたん?まさか彼女?」
「彼女ちゃうわ、友達や」
「ちょっとおかん、大毅に彼女ができるわけないやろ」
「それもそうやな」
「納得すんな。姉ちゃん、この前話してた同じクラスの譜久村さん」
「あぁ!可愛いって言うてた子やね」
「ちょっ、本人おんねんから」
「ええやん、悪いこと言うてたわけやないんやし」
「せや、譜久村さんおいくつなん?」
「俺と同じクラスや言うてるやろ、おかん。もう、譜久村さん困ってるやんか」
「あら、ごめんなさいね」
「あっいえ、全然そんな……」
漫才のようなテンポで、繰り広げられる会話
こんな些細な会話でも面白いなんて
「ほら譜久村さん、いっぱい食べてってな。智洋くんと流星くんも育ち盛りやねんから、ぎょうさん食べや?」
「遠慮せんでええからね。ちょっとお父さん、もうちょっとそっち寄ってや。みんな座れへんやろ」
重岡くんは、家族に愛されてのびのびと育ったんだろうな
「聞いてや、おかん」
午前中の勇姿を語る重岡くんを見て、少し羨ましくなった
.
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作者名:楓 | 作成日時:2023年8月18日 14時