空気感が温かいお店. ページ21
. 智洋side
俺と譜久村さんは、気を取り直してカフェに向かって歩きだした
「流星とおると、こういうことようあんねん」
流星には、振り回されることが多い
でも何でか分からんけど、憎めへんのよな
「藤井くんって、天然なんだね」
「よう言えばな。悪く言えば、残念なイケメンや」
「イケメンって、褒めてるんじゃ……」
「嫌味で言うてんねん。イケメンって、何でもそつなくこなすイメージあるやん？」
「んー、ギャップがあっていいと思うけど……」
……譜久村さん、流星と同じこと言うてるわ
流星に言うたら、“せやろ？ほら、言うたやん！”って言いそうやな
「先に言い出したんは、しげやねん」
「あぁ……言いそうだね」
二人でしげを想像して、笑い合った
譜久村さんの自然な笑顔が、見れた気ぃする
ちょっと馴染んできたんちゃう？
「確か、ここら辺やと思うけど」
「あっ、このお店じゃない？」
『Bonheur』
「何て読むんだろう……」
「“ボヌール”って読むらしいで。メッセージやってんけど、絶対ドヤ顔で送ってきたと思うで」
「あぁ……右の口角を上げながらね」
今度は流星を想像して、笑い合った
ドアを開けて中に入ると、どことなく沖縄みたいな雰囲気の内装やった
「らっしゃい！」
俺らに気づいた人が、カウンターの向こうから顔を出して
人懐っこそうな笑顔で、元気よく挨拶をした
すごく日に焼けた沖縄生まれっぽい、短髪の男の人やった
いや、ここは居酒屋か
「好きなとこ座ってな。なっちゃん、注文取ったって」
……関西弁？
あれ？沖縄の人ちゃうんかな
「はいはい。もぉ、まだメニューも見てへんのに決まらへんよなぁ。ゆっくり考えてくれてええからね」
そう言いながらも注文書とペンを構えて、こちらを笑顔でじっと見るなっちゃんと呼ばれた人
「いや、ゆっくり選ばせる気ぃないやん！」
はっ！思わず突っ込んでもうた
「兄ちゃん、ええツッコミやね。……あれ？君、譜久村さんとこのAちゃんやない？」
「えっ!?」
驚いてその人を見る譜久村さん
「覚えとらんか、こーんなちっこかったもんな」
指で小ささを表してるけど、ちっさすぎやろ
譜久村さん豆粒サイズやん
譜久村さんの目線が脳内の何かを探すような動きをした後、閃いたように目ぇを見開いた
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作者名：楓 | 作成日時：2023年8月18日 14時
