一個交換. ページ12
. 智洋side
譜久村さんが転校してきてから、一週間が経った
あんだけ騒がしかった休み時間も通常に戻り、譜久村さんの机の周りに集まる人も疎らになってきた
仲良さそうな人とかは、まだおらんみたいやし
譜久村さんも不安やろな
友達になりたいとかやなくて、ただの好奇心やったんかな
よそ者ってわけちゃうけど、東京の人やからとかもあるんかな
「神山くん、今日はお弁当なんだね」
「昨日、夕飯に唐揚げ作りすぎてん。せやから今日は、お弁当にしようかなって」
俺らはあの日から毎日、一緒に昼ごはんを食べてる
今日は譜久村さんと先に、二人でいつもの場所へ
しげと流星は、部活の事で話があるみたいで先生に呼ばれたから、少し遅れるらしい
譜久村さんと二人きりになるのは始めてやったから、ちょっとだけ人見知り発動中
「そう言えば、重岡くんが絶品だって言ってたね」
「……食べてみる？」
「えっ、いいの？」
「おん。……じゃあその玉子焼きと交換してもええ？」
「いいよ！神山くんの唐揚げ食べてみたかったんだよね」
譜久村さんは、すごくワクワクした顔で唐揚げを見てる
譜久村さんのお弁当箱のフタの裏に唐揚げを入れてあげると、嬉しそうに微笑んで
「はい、どーぞ」
そう言うて玉子焼きを、俺のお弁当箱のフタの裏に置いてくれた
「ん〜、すごく美味しい」
「ほんま？おかん直伝の隠し味入ってんねん。教えへんけど」
「えー、教えてくれないの？」
「教えたら隠しにならんもん」
「んふふっ、そうだよね」
譜久村さんの玉子焼きは、甘くなくてネギが入っていた
ってか案外喋れてる？
譜久村さんって話しやすいんやな
「神山くんの彼女になる人は幸せだろうな」
「ん？」
「だって優しいし、料理できるし、面倒見よくて……カッコいいもん」
「んぐっ、ゴホゴホッ」
「神山くん大丈夫？」
思いもよらない言葉に、玉子焼きが気管に入った
俺を心配したのか、顔を覗き込んできた
その近さにドキドキする
「カッコいいとか、無闇に男に言わん方がええで」
「そうなの？」
「男ってほんま、とんでもない生き物やからな」
「……神山くんも？」
言葉の本質を理解してへんって顔やな
どんな皮を被ってたって、男はみんな狼なんやで
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作者名：楓 | 作成日時：2023年8月18日 14時
