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番外編 陸 ページ26

「……」


「……」



気まずい静寂が部屋を包む。




「A、」




突如口を開いたのは炭治郎だった。




「……なに」




それ以上こっちに近づくなよ、という意味を込めジト目で見上げる。




「ッ……!!」




静寂に、唾を飲む音が響き渡った。






_____宜しくない予感がする






見上げた先にあったのは、完全に狩る者の眼をした炭治郎の姿。





「たんじろ、……っ」





後ろから、力強く回された腕に全身が反応して指先が痙攣する。




「A、」





偶に感じる髪の擽ったさはある意味毒だった。





「A……」





何度も私の名前を呼ぶ彼はいつもの長男らしさの欠片も無くて可愛らしく思えてしまうがそれどころではない。




不意に首元に鼻が寄せられ、すんと音が鼓膜を揺らす。



「…ひ…ぁ…!?」



指の間を縫って出た声は、自分のとは思えないほど高い。



羞恥のダブルパンチでもう降参したかった。




「俺、Aの優しくて暖かい匂いが好きだ」




___優しくて暖かいのはお前だろうに。




私が世界に独りぼっちだと言った事が相当堪えたのか、存在を確かめるかのように何度も抱きしめ直される。






「いや、匂いだけじゃない。」









「俺は、Aが好きだよ」









えっっ


二度目の静寂。




困惑に呑まれ、耳元では心臓の音が煩く鳴っている。




どうしたものか、そもそも何でだ、雰囲気に流されただけではないのか、なんで、なんで………





何故の渦に吸い込まれて目を回していると、背中に圧が掛かって全身が跳ねる。




「たっ、炭治郎…?」




返答は無い。




「炭治郎サーン……?」




揺らすと自爆するので何とか声で安否を確認しようとすると、微かな寝息が聞こえた。



「大量の任務から帰ってきたばっかりだったらしいからな………」





寝不足だったのだろう。



全く、やられたなぁ…





薬が切れたのを確認し、いつの間にか空いていた扉をバキバキに壊してから炭治郎を背負って大切な人達の待つ屋敷へと帰った。








〈気づけば炭治郎の番外編だけとても長くなっていて驚きました。〉



〈作者は伊之助と煉獄さんが好きです、へへ〉



〈番外編はお楽しみ頂けましたでしょうか?〉



〈次回の更新から原作、那多蜘蛛山編に移っていきます。〉





〈今後とも、『遡行者奇譚』を宜しくお願いします。〉

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(プロフ) - とっても面白いです!続き楽しみにしてます! (2019年8月16日 15時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:哀色 | 作成日時:2019年7月29日 12時

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