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拾伍 ページ16

私は炭治郎たちとは違って無傷だったので、彼らが休養中の時もひささんの屋敷を拠点に任務に駆り出されていた。


今はその帰りである。


帰路で見つけた団子屋でみたらし団子を数本買い、ひささんにもお裾分けしようと少しわくわくしていた。



「うん?誰だ、アレ」



日は暮れて、人の気配などなかったはずの所に西洋寄りの格好をした帽子の男が立っていた。



「お嬢さん、貴女はもしや、遡行者ではありませんか?」


「ぇ、……あ、っと………」





『良いねA。自分が遡行者であることは誰にも言うんじゃァないよ。“鬼”に喰われちまうからねェ』




どこかで藤子の言葉が反響した。



「いや、……違っ」

「嘘だな」



頬から耳裏までをがっちりと両手で掴まれ、強制的に目を合わされる。


触れた手は酷く冷えきっていて、紅の瞳からは人並外れた狂気が見え隠れしていた。





「瞳孔が不自然に開いているそれに呼吸も浅い。嘘はいけないぞ、一之瀬A。」





___なんで、何で名前まで知っているんだこの男





「そう怯えるな。私は君にある提案をしに来ただけだ。」


「鬼に成る気はないか、A。時に選ばれたお前が鬼になればきっと永久の不変を手に入れられる筈だ。」




此方の意志を尊重しているように聞こえて全くその気の無い言葉。


得体の知れない恐怖がせり上がってきて距離を取りたいのに凄まじい力で捕まっているので逃げられない。




終わった。短い生涯だった。


提案しに来ただけ、なんてどうせ嘘だ。





_____なら反抗して死んでやろう。





そう腹を括った。





「断る。」

「そうか、残念だ。」




あぁどうやって殺されるのだろう。


痛くないといいのだけれど。


ぎゅっと目を瞑っても、何も起こらなかった。





「しかし殺すのも惜しい。」





え、と口が音を紡ぐ前に肩に何かが食い込む感触がした。



「いつか必ず、お前を迎えに行こう。A、」



なんて全く嬉しくもない台詞を残してその男は去っていったがそれ所ではない。



刺された右肩は筋張って、今にも火を吹きそうに熱を帯びている。




「あ、ガッ……ッい、」




次第に呼吸をする事さえままならなくなるほどの痛みが走り始める。









「っ帰ら、な……ぃ…と、」







ひゅー、ひゅーと明らかに不味い呼吸音を響かせながら、みたらし団子の入った箱を握りしめ歩き始めた。

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(プロフ) - とっても面白いです!続き楽しみにしてます! (2019年8月16日 15時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:哀色 | 作成日時:2019年7月29日 12時

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