家族 ページ5
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あたしはすぐさま小さなクッキーを一つ選んで口に入れた。食べた瞬間に香ばしいバターの味が口いっぱいに広がる。サクサクとした軽やかな食感と、少し控えめなちょうどいい甘さにあたしは思わずほっぺに手を当てる。
「んー!!美味しい!!やっぱりマンマの料理は美味しいね!」
「そう言ってくれると嬉しいねぇ。作った甲斐があったってもんだよ」
美味しくて思わず声をあげると、マンマは嬉しそうに頭を撫でてくれた。お母さんみたいでマンマは大好きだ!
「俺達に特別くれたんだ!だからエキュルも皆には、しーだぞ!」
ラビットは口に人差し指を当てて、「しー」っとジェスチャーしてくる。あたしは頬いっぱいにクッキーを詰めながらうんと頷くと、ラビットは満足そうに笑顔を浮かべた。
「そういっぱいに頬に詰めてると、なんだか本当に栗鼠に見えてくるよい!」
「あはは!本当だ!」
「あんまりがっつき過ぎて喉につまらせないでおくれよ。けど、明日からは大変だからね。エキュルはポルトパラディーゾは初めてだろう?」
「オイラは一昨年行ったから分かるけど、この時期のポルトパラディーゾは本当暑いんだい!」
「そうそう、エキュルも気をつけるんだぞ?」
三人とも優しい顔でそう言ってくれる。なんだか、本当のお母さんとお兄ちゃん達みたいでなんだかくすぐったかった。あたしは、口いっぱいに入ったクッキーを飲み込み、胸を張って敬礼をする。
「あいあい!マンマの美味しい手料理があるから簡単にはばてないよ!そうだ!クッキーのお礼に今日は料理手伝ってあげるね!」
「本当かい!?ありがとよ」
「マンマー!俺も手伝う!」
「じゃあ、おいらも!」
「そうかいそうかい、じゃあみんなで料理しようね」
クッキーを平らげたあたし達はマンマとクック指導の元、料理をお手伝いすることになった。そして、ブラックパール号のキッチンからは大きな悲鳴や物音が鳴り止まなかった。
──────
「なんとなくそんな感じはしてたけど、まあ怪我しなければ大丈夫よね!」
「うう……マンマ、クック、ごめんなさい」
「「ごめんなさい」」
「いいのいいの気にしないで!それでもいつもより捗ってるから、ありがとね」
「手伝ってくださって、どうもすみません。ああ!また謝ってしまった……。ありがとうございます!」
「本当!?マンマもクックも大好きー!」
「俺もー!!」
「おいらもだい!!」
「マンマも三人のこと大好きだよ!」
「俺もですよ!」
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作者名:青狸 | 作成日時:2019年9月6日 18時