パグロムアルマ【オリジナル小説】 (ページ7)

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二、動き出す歯車ページ7

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暖かい日差しの下、ミント＝シャングリラは短く切りそろえた白髪混じりの黒髪をなびかせ、愛用する刀を構えていた。正面に対峙するのは、大剣を構える豊かな赤い長髪をポニーテールでまとめた女。ピクリとも動かない二人の間を一陣の風が吹き抜ける。
瞬間、赤毛が一気に間合いを詰め、大剣を横薙ぎに振るった。ミントは刀でそれを防ぐと、上に大きく弾いて回し蹴りを放った。赤毛は剣を弾かれた反動を使って後ろに飛び退く。追いかけるように一歩踏み出して刀を真っ直ぐ突き出すと、それを剣の平で受け流され、そのまま大剣が首元へと伸び───

｢……っと、引き分けか｣

赤毛の剣はミントの首元で止まり、ミントの刀は赤毛の顔スレスレで止まっていた。赤毛は少し悔しげにそう呟くと、大剣を下ろして地面に突き刺した。ミントも刀を鞘に収めると、近くに置いておいたタオルを赤毛に投げてよこした。

｢お疲れ様。ねぇリリアナ、ちょっと休憩しようよ｣
｢そうだね、結構いい汗かいたな。喉乾いたから飲み物取ってくる。ミントもいるよね？｣
｢うん。じゃあお願いしよっかな｣

リリアナ＝テイラーは豊かな赤毛を揺らし、建物の中へと消えていった。一人になった中庭で、ミントは近くのベンチへと腰を下ろし、大きく息を吐いた。リリアナにお願いされ、朝からずっと鍛錬に付き合っていたのだが、昼も間近になり流石に疲れが溜まってきたのだ。

｢ミント、お待たせ！はい、水持ってきたよ｣

それに比べて、笑顔で水の入ったコップを差し出すこの子は、全くと言って疲れた様子は見えない。一体どんな鍛え方をしたら、ここまでの体力が養えるのかはたはた疑問だ。

｢ありがと。リリアナも座れば？｣
｢うーん、私はもう少し素振りしてる｣

水を一気に飲み干して、笑顔でそう言うリリアナに、ミントはもう驚愕しかなかった。
しばらくの間、一人で素振りを続けるリリアナを眺めていると、若い男が中庭へと入って来た。

｢失礼します。シャングリラ中佐並びにテイラー中佐、ハミルトン大佐がお呼びです。至急大佐室の方へとの事です｣

ピシッと敬礼をした男は、ウォレン＝ジークリード。ミント直属の部下であり、少佐でもある。

｢了解した。わざわざありがとう｣
｢いえ。それと、私にもお呼びがかかっておりますので、ご同行させて頂きます｣
｢分かった。リリアナ、行くよ｣
｢うー、もっと素振りしたかったんだけどな……｣

渋るリリアナを引き連れて、大佐室へと向かった。