一、不穏な気配 ページ2
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ザルバ=バーノルドは、非常にイラついていた。先程から何者かに跡をつけられているのだ。森から草原に出たあたりからずっと。最初は自分の首を狙う賞金稼ぎかと思い、相手の出方を待っていたのだが、一向に仕掛けてくる様子はない。
「ったく、変な奴らに付きまとわれてんな……」
遂に痺れを切らし、大きく舌打ちをして後ろを振り返った。
「おい!俺に何の用だ」
ドスの効いた声を出せば、草の間から如何にも山賊です、というような見てくれの男達が現れた。数えてざっと十数人はいるだろう。
「バレたんじゃあ仕方ねぇな」
そう言ったのは、貫禄のある頭領らしき男。山賊達はにやにやと効果音がつきそうな程嫌な笑みを浮かべながら、にじり寄ってくる。
ザルバは面倒な奴らに絡まれた、と透き通るような碧眼を細めて苦々しげな表情を浮かべ、ため息を吐いた。
「おいおい、なんで俺なんか狙ってんだよ。どう見たって金持ちのボンボンには見えねぇよな?」
「ああ、そうだな。けどよ、俺たちは見ちまったんだよなぁ。お前の内ポケットに入ってる、高そうなハーモニカをよぉ」
ザルバは数十分前の自分を殴りたくなった。鬱蒼と茂る森の獣道を歩いていた時、ここには流石に誰もいないだろう、と高を括ってハーモニカを吹いていたのだ。こんな奴らに絡まれるくらいなら演奏しなければ良かった。
しかし、ザルバは同時に安心もしていた。どうやらこの山賊共は、ザルバが多額の金をかけられた賞金首だと知らないらしい。キースを使うまでもないようだ。
──そう思っていたのに。
ポンッとワインの栓を抜くような子気味いい音と共に現れたのは、白くて長い髪を持つ幼い少女。
「なっ!?今、何処から!?」
なんの前触れもなく現れた少女に、山賊は目を見開く。一方のザルバは驚きもせず、不機嫌そうに顔をしかめて少女に目を向けた。
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姫奈(プロフ) - 場面が目の前に映し出されるような文章で、引き込まれました。陰ながら応援しています。 (2018年2月19日 18時) (レス) id: c18e747859 (このIDを非表示/違反報告)
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