飯炊き見習い改め料理人 ページ6
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抵抗もせず頭を撫でられていると何か視線を感じた。その方向へと視野をずらすと、マンマさんが出てきた部屋から、青いターバンをした若い男がひょこりと顔を覗かせていた。
「新しい人?君が噂の……」
「あれー、クックだー」
男が小さく呟いた声が聞こえたようで、ピットさんが手を振る。ピットさんの声でマンマさんも気づいたらしく、後ろを振り返りその存在を認めると、腰に手を当ててやれやれと呆れた表情を浮かべた。
「こら、クック!いくら新人ちゃんが気になるからって、ちゃんと料理なさい!焦げたらどうするの!?」
「ま、マンマさん!すみませんすみません!」
男はマンマさんに怒られて、何度もへこへこ謝りながら奥の厨房へと引っ込んでいった。少しして、何かを焼くジュージューという音が聞こえてくる。
「全く……。あの子はクックっていうんだ。この前までは飯炊き見習いだったんだけどね、今は立派なバルボッサ海賊団の料理人さ!」
「そうそう。クックは料理上手いんだよー。マンマには負けるけどねー」
ピットさんがマンマさんの言葉に頷く。なるほど、ここではマンマさんとクックさんが全員のご飯を作ってるのか。でも二人だけで海賊団全員のご飯を作ってるだなんてスゴすぎる……。
「じゃあピット、連れてきてくれてありがとうね。もう大丈夫だよ」
「わかったー。じゃあ僕はもう行くねー」
ピットさんはまた柔らかい笑みを浮かべて、あたしとマンマさんにヒラヒラと手を振ると、食堂から出ていった。
ピットさんが見えなくなるまで見送ると、マンマさんはくるりとあたしに向き直り、ちょっと意地の悪い笑顔になった。
「よし、じゃあ早速やっていこうかね。ほら、こっちへおいで!」
あたしはマンマさんに連れられるがまま、厨房脇の小部屋へと連れていかれた。
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作者名:青狸 | 作成日時:2019年8月31日 17時