龍の煙管 ページ14
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その後も、指輪をいっぱい付けたロレッタや、謎スカさんというドクロの飾りが表紙にでかでかとついた本を持ったなぞなぞ大好きなクリスなど、色んな人から話しかけられて疲れきったあたしは、皆にバレないように甲板を抜け出した。唯一静かだった船尾まで行って手すりに腰掛ける。
「はぁ、なんか今日だけでこんなに疲れちゃうとはなぁ」
ため息と一緒に弱音を吐き出し、無意識のうちにポッケから煙管を取り出していじる。煙管の胴部分は竹製で、見たことはないが桜という花の形が彫り込まれ。そして雁首と吸口は美しい龍の装飾があり、月の光で淡く金色に光る。しばらく無心で煙管を眺めていると、後ろから足音が聞こえてきた。
「珍しいな、ここに人がいるなんて。あれ、君は……A？」
振り返ると、帽子を被った真面目そうな男が立っていた。見た感じ酔っている素振りはなく、凄いお酒に強いのかもしくはお酒が飲めないたちなのだろう。
「そう、A。よろしく。それで貴方は？」
「ああ、自己紹介が遅れたな。俺はゴールドだ。トリックやジュジュビと同期なんだ。元・医者の卵で船医紛いの事もしている」
「お医者さんか、凄いな。勉強大変だったでしょ？」
「医者じゃなくて、医者の卵だからな。勉強とプレッシャーで押しつぶされたから、今ここにいるんだ。ただのなり損ないのダメなやつだよ」
そう言ってゴールドは苦笑いを浮かべる。医者になるには様々な知識を身につけなければいけないと聞いた事がある。
「でも、一時でもそうやって勉強に取り組もうとしたってことが立派だと思うよ」
「そうか、ありがとな。……ん？その手に持っているものは？」
少しはにかみながら笑ったゴールドは、あたしの手元の煙管に気づいたらしい。そう聞かれて、咄嗟に背中の後ろに煙管を隠す。何故だか分からないが、反射的に隠してしまった。
「あ、いや、別に盗ったりはしないぞ？いくら海賊とはいえ仲間のものは狙わないさ。別に見せたくないなら無理して見せなくていいけど」
「あ、いやそういう訳じゃないの。なんか咄嗟というか反射で……」
「そうだったのか、じゃあ少し見てもいいか？」
あたしは頷いて、ゴールドの前に煙管を差し出した。
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作者名：青狸 | 作成日時：2019年8月31日 17時
