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私が知らない彼の姿・深霊side ページ45

いつの間にか眠ってしまっていたようで目が覚めた時には既に太陽は沈んでいた。

(ここは寒いな……ちょっと移動しようかな……)

山を降りると人間たちは春の祭りで賑わっていた。

(祭りは好き……でも嫌い……)

1人で過ごす祭りほど虚しいものはない。
皆でワイワイしながら遊びたいな、とも思うが親しい人など片手で数えられる程しかいない。

幼い少女が1人で歩いていては色々と面倒事が起きるので誰にも見られないよう姿を消してとぼとぼと歩く。

しばらく歩いていると遠くに小さなボロ屋がポツンと建っていた。

(私の仮屋みたいだな……あれ?あそこにいるのって……)

そのボロ屋に入っていく小さな後ろ姿には見覚えがあった。
確認のためそっと近くに寄り木に隠れて見つからぬよう様子を見る。

(やっぱり……那呪浬だ……あの格好ってことは死神としての仕事かな?)

彼の仕事姿を実は見たことがなかったので気になった彼女は悪いとは思いながらも好奇心から見続けていた。

「我は……汝の…………きた」

(良く聞こえないけど……何か普段と口調が違う?ある意味死神らしいとは思うけど……)

那呪浬の前には自分と同じくらいの年頃の少女が横たわっている。
死にかけのようで顔は青白く息は荒い。

自分には怖くてこの仕事は無理だな、と改めて彼に感心しながら那呪浬と少女のやり取りを聞いていた。

「………怖くないのか?」

自身の死を告げられても動揺しない少女に那呪浬は不思議そうに尋ねる。

「………これが運命なのですから」

そう受け止めた彼女はそのまま静かに息を引き取った。
少女の最期を看取った那呪浬は何も言わず、黙って彼女の魂を回収する。

ボロ屋から出て彼はボソッと独り言を呟いた。
あまりにも小さかったので聞こえなかったがその次ははっきりと聞こえた。

「あははっ……ボクって意外にどす黒い感情持っているんだなぁ」









今まで見たことのなかった那呪浬の様々な姿を見て彼女も同じように独り言を呟く。

「結局私は……彼にとって必要とされてる存在なのかなぁ……」

別に、彼の仕事姿が普段と違う分には問題ない。
だがもし他にも自分の知らない姿があったら?

(どんな姿でも私は那呪浬が好き……でも無理させてたら?)

もし気を使われているのなら、それで彼が苦しんでいるのなら暴言を吐かれてでも本音を言ってくれたほうがマシだ。

そうやって思っていることを伝えられない自分を呪いながら深霊は1人、千秋楽へと戻っていった。

優しい女性・砂月夜空side→←可愛らしい者 逆火部菜月side



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甘味雅 - 青狸さん» いえ!続編まで作ってもらいありがとうございます! (2016年6月11日 7時) (レス) id: 275a3f5788 (このIDを非表示/違反報告)
阿須波(プロフ) - 千秋会議の方も宜しくお願いします (2016年6月10日 22時) (レス) id: 2cfe1139d2 (このIDを非表示/違反報告)
阿須波(プロフ) - 畏まりました (2016年6月9日 19時) (レス) id: 2cfe1139d2 (このIDを非表示/違反報告)
とぅび(プロフ) - 了解でっす! (2016年6月9日 19時) (レス) id: 5f1530390f (このIDを非表示/違反報告)
青狸(プロフ) - とぅびさん» 続編に更新お願いします! (2016年6月9日 19時) (レス) id: 17b47670ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青狸 x他18人 | 作者ホームページ:p://  
作成日時:2016年5月8日 16時

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