【募集企画】神々の住む世界・壱【小説】 (ページ39)

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マイペースと子供っぽいは紙一重・木花焔side ページ39

かたり、とペンを置く。
一つ息をついてから、またペンを握る。
あぁ、この単純作業を、もう何度繰り返しただろうか。なんだか手が痛くなってきた。
「皆さんはまだでしょうか・・・」
休憩しようと、席を立った時に思わず漏れた言葉。そう、そうなのだ。あまりにも遅すぎる。
彼を連れ戻すのに、こんなにも時間はかかっただろうか。
いや、今日に限って、どこか別の国に行ってしまったのかもしれない。

ふと見た時計に驚く。珍しく、長い時間集中していたようだ。下のほうにあった短針は、もう半分まで上がってきていた。
しかし、ここまで誰も来ないとさすがに寂しくなってくる。
なにか気晴らしをしないと、と扉に向かう。
「散歩しましょう。散歩」
独り寂しくつぶやきながら扉に手を掛けた。からら、とゆっくり扉を開ければ暖かな光に包まれる。朝よりも、少し高く上がった太陽がさんさんと輝いているのが屋根の隙間から見えた。
どこに行くわけではないけれど、ただただ歩くのも一興だろう。

目的地もないまま歩いていると、いつの間にか茶屋や甘味処の並ぶところまで来たようだ。
おそらく、酷使した脳が甘いものを欲しているのだろう。暖かな風に乗って、鼻孔をくすぐる甘い香りがしてきた。どこのお店もおいしそうな香りを纏い、お客を呼んでいる。あっちこっちと歩き回っていたら、ある人が目にとまった。

灰の髪とアホ毛、青と藍にちりばめた星の浴衣。彼はおそらく、雲井宙留さんだろう。
直接的な関係はないが、彼の母国、空ノ国で何度か会ったことがあり、覚えていた。甘いものが好きだ、と言っていた彼も、この香りに誘われてきたのだろうか。
「雲井さん、お久しぶりです。」
少し小走りに彼に近づく。後ろから声をかければ、振り返ってくれた。
しかし、中性的で可愛らしい顔を歪ませる彼は、私のことが分かっていないのかもしれない。
「あれ、えーっと・・・。木花さ、ん？」
どうやら覚えていてくれていたようだ。
「はい、木花焔です。雲井さん、ここの甘味処は全部美味しいですよ」

その後、見事に目を輝かせた彼を連れて、適当な甘味処に二人で入った。そして、そこの甘味処のおすすめらしいあんみつは、思っていた以上においしかった。

「あんみつ、おいしかったです。ありがとう」
彼はふわりと笑い、手を振り帰路へ就く。後姿を見送りながら、自分も帰らねば、と帰路に就く。

お店を抜けたところで、見慣れた背中を２つみつけた。
「菜月さん！煌菊さん！」