手を伸ばせば。 (ページ1)

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好きだった。

いつもみんなの中心にいて
誰よりも周りを見ていて
たくさん笑う君が好きだった。

なのに、神様は残酷なもので

「俺さ、彼女できた！」

嬉しそうに愛おしそうに言う君にまた惹かれてしまって慌てて作った顔で

「おめでとう」

なんて思っても無い言葉を呟く。

「おう」

彼女が下で待ってるからと言って教室から出てった君を見送って窓の外を見れば照れながら手を繋いで歩く2人の姿を見て痛くて、苦しくて

「っ、好きだったんだけどなあ…」

誰もいない教室で泣くことしか今の私は何も出来なかった。

涙が拭っても止まらなくて止めたいのに止まらなくて
なのに、そっと頭に触れた感触に辿って顔を見あげればポーカーフェイスを崩さず

「よしよし」

そのまま頭を撫で続ける手が優しくて、
無表情なのにその瞳が優しく感じて、でもそれを湧くんに重ねてしまって。また涙が止まらなくなった。

「もう大丈夫」

しばらくてそう言えば頭から離れた手に少し寂しくなってふと顔を見れば

「目パンパン」

なんてデリカシーの欠けらも無いこと言ったと思ったら私のカバンを持ってドアの方に近づいて突然こっちを見たと思ったら

「送ってやる」

そんな不器用な優しさが今の私には凄く心地よかった。