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荷物を持って
その場を動こうとした二人の間に
ふわっと風が吹く
ひらひらと舞う花びらがひとつ
「あ、、、」
Aちゃんの前髪についたそれに手を伸ばす
恥ずかしそうに伏せた目に
ドキドキ
こんな事に心動くなんて
僕は中学生かな?
初めて恋をした時にはもう練習生だった。
それからいろんな女の子と出会い、別れ
大人みたいな曖昧な関係も経験した事があるけれど
いつもそこにあるのは一人の「僕」ではなくて
みんなが作り出した、
いや違う、、
自分が作り出した「アイドルな僕」
「行きましょうか。」
「歩いて5分くらいですから。」
「あ、うん。
と、言いたいところなんだけど。
僕もホテル、いっかい戻ってから行っていい?」
「すぐにタクシーでいくから。場所教えて?」
彼女が言うホテル名と部屋番号をスマホに
メモして、一旦別れを告げる。
案外近くだな。僕達のホテルと。
「30分後には行けると思うから」
「わかりました」
「じゃあ、また後で」
目深に帽子を被り直して
マスクをつける
気がつけば、向こうに見えていた
レジャシートのグループも
そろそろお開きな雰囲気。
近くでタクシーを拾い
ドカッと座席にもたれかかった。
賑わう街並みを眺めながら
ふーー。
一息つく
そうだ
部屋に戻って
冷やしてあったシャンパンを持って行こう。
ホントはマンネと飲む予定だった
名前のわからない高級なやつ。
あはは、、
怒られる気がするけどまぁいいや
メンバーとはいつだって飲める。
本当は
別に一旦ホテルに戻らなくたって
「戻らなきゃいけない用事なんてないし」
急ぎの予定はもう全て終わらせてあるし
明日の仕事は明日の移動の時に確認すればいい。
あーー
思わず頬がゆるむ。
久しぶりに感じる
日常みたいな
非日常。
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作者名:めみ | 作成日時:2023年3月24日 20時