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ザー ザザーー
夜と海の組み合わせって好き
「お待たせ」
「ほんと、待ちくたびれたよー」
「どうしてもAと海に来たくて、夜の海」
耳につけていたイヤホンをゆっくり外して
周りに人がいないかを確認した。
ビーチ横の階段に腰掛けて
寄せては返す波を眺めながら
なんとなくで選んだ彼の曲、いや
【彼等の曲】
それを聞きながらジミンが来るのを一人でまっていた
私が先に部屋を出て
ここで30分くらい待っていたのかな
「何聞いてたの?それ」
ぴたっと隣に座ると、ふわっと香る私を安心させる匂い
「この動画、ジミンが来るまでこれだけ見てたんだよ」
「どう?気に入ってくれた?」
ニコっと目を細めて笑う
この30分で私が知った事はそう多くはなくて、ネット上のありあまる情報の中から一つだけ選んだその動画。
「ポゴシプタ、これだけは聞き取れたよ!ジミンが私にくれた言葉だから」
「今まで、言わなくてごめんね?」
「ううん。でも、やっぱりちょっと驚いちゃった!私の友達でもね、BTSファンの子いるんだよ」
「それなのに、今までAは僕のこと気が付かなかったんでしょー。どんだけ興味ないのよ!」
「ジミンに気づく瞬間なんて、きっといくらでもあったのにね」
真夏の夜、イヤホンから漏れるのは
私達の出会いから会えない日々を思い出させるような
そんなあたたかくて切ない曲
「その子ジミンじゃなくて違う人が好きだって。なんだっけジョン、グ?」
「あ、それジョングク。チョンジョングク」
「、、っあ!!」
「おっ。気づいた?前、電話した」
【ヒョンがお世話になってます!チョンジョングクです】
思考を巡らせると、今までのいろんな事が繋がって
ピンクだった髪も
透き通る声も
やたらと似合うブランド物も
仲間と別々の部屋に泊まる高級ホテルも
あまりにも取れない休み
全然繋がらない電話
次々とパズルのピースがはまってゆくみたいで
「なんだか不思議な気持ち」
「じゃあ、、、みてて?」
二ッと意味深に口角をあげる
ゆっくり立ち上がるとサンダルを脱ぎ
砂の上で踊り始めたその姿
波の音をBGMにして
月の光をスポットライトみたいにあつめて
滑らかに、妖艶に
「ジミン、、」
最後のピースがぴたっとはまった気がした。
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作者名:めみ | 作成日時:2023年3月24日 20時