手料理 Your side ページ7
一口食べてみると、今まで味わったことのない美味しさが口の中いっぱいに広がった。
味付けからして恐らく隠し味なんかは入っていない。
なのに、どうしてか高級レストランにも負けないくらい美味しい…。
だからお行儀が良くないのも忘れて、
「美味しい！！！」
と叫んでしまった。
それを聞いた瞬間、啓悟の顔がパッと明るくなる。
「ほんとか！？お世辞やなくてか？」
「うん！！ほんとに美味しい！！これなら何回でもおかわり出来るよ！！」
大好きな人の手料理、そして大好きな人の笑顔を前に、リビングはとても温かい空気に包まれたのだった。
──────あれからあっという間に1週間が過ぎ、私は初めての訓練を受けるために博多支部へ赴いていた。
日中はホークス事務所で事務、帰ってからはあの分厚い資料を熟読するという生活を送っていたせいで、まだ少し肩が凝っている気がする。
【9:00】
そろそろだ。
「キーッ」と古びた音を立てて扉が開く。
「こんにちは、初めまして。」
受付の隣の待合室で待っていた私をスーツを着た人達が迎えに来た。
「こ、こちらこそ初めまして！私はA Aと申します…！」
「はい、存じ上げていますよ。…ではAさん、私達に着いて来てください。」
「は、はい！」
私がそう言い終わるか否かの時にはもう背中を向けて歩き出すスーツの人達。
このテキパキとした感じが中々慣れない。
心臓を一定間隔で握られているような鼓動を感じながら慣れない建物の中を早足で歩く。
幾つもの頑丈な扉とセキュリティシステムを越えたところで、
「どうぞ。」
と大きな部屋に通された。
まるで母校の体育館
中央には小さな人影が2人。
「あ、来ましたか。先週ぶりくらいですかね。」
「目良さん！？！？」
「はい目良です。如何せん名前を覚えてくれない人が多いので、覚えていて貰えて良かったです。」
「は、はぁ…」
相変わらず目の下に隈を飼い慣らしている目良さんの姿に少し緊張が和らいだ。
「で、本題を話そうかしら。」
目良さんに気を取られていて気が付かなかった。
その凛とした声、最近になって幾度か聴く機会があったとは言えどまだどこか怖い。
「か、会長さんまで……」
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作者名：浦玖珂 咲希 | 作成日時：2023年4月3日 9時
