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俺、君の役に立ててたんだ。
そして俺としたことが、Aがサラリと言えた言葉が欠けていた事に今まで気が付かなかった。
「A、」
「ん？」
「ありがとう。」
言わなきゃいけないこと ホークス's side ページ38
「ずっと君に言いたかったことがある。」
ここは俺御用達の店、「焼き鳥ヨリトミミドリ」の個室。
向かい側で眉をひそめてこちらを見つめるA、そして俺もまた緊張を隠せずにいる。
「…あの時さ、君が声を掛けてくれてなければ俺は死んでたと思う。」
「え？」
「君があそこで半ば無理やり引き止めてくれたお陰で、俺はヤケになって働くことにならずに済んだ。キャパを無視してさ。」
「…つまり？」
「君が居てくれたから、今の俺が居るんだ。」
一瞬目を丸くしたAは一呼吸置いて、今度は優しい笑顔をこちらに向けながら言った。
「それは私こそだよ。」
「えっ」
思ってもなかった事を言われて、俺まで目を丸くしてしまった。
数秒間の優しい沈黙は、別に嫌じゃなかった。
「あの時、啓悟が私を個性事故から救い出してくれなかったら、私こそ今頃お墓の中だよ。本当に感謝してもしきれない。」
あぁ、そっか……
そして俺としたことが、Aがサラリと言えた言葉が欠けていた事に今まで気が付かなかった。
「A、」
「ん？」
「ありがとう。」
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作者名：浦玖珂 咲希 | 作成日時：2023年4月3日 9時
