質問 Your side ページ4
───それから啓悟は、会ってからずっと抱かれていた疑問を沢山打ち明けてくれた。
ただ、答えにくい質問もいくつかあった。
答えたくない訳じゃない、でも答えられないような質問が。
例えばどうして公安は私の存在を今になって表に出し始めたのか、とか。
私にも分からない事だった。
ヒーロー教育なんて特に、小さい頃から積み上げた方が公安にとっても扱いやすいに決まっているのに。
啓悟いわく今になってヒーロー教育を基礎から習い始めるのはおかしな話、というか今の日本においては義務教育未修の状態に当たるそうだ。
なら尚更、どうして私は今まで何も教えて貰えなかったのだろうか。
自分でそうした訳じゃないからこそ、私には答えられなかった。
そして初対面で「ホークス」を本名と勘違いしたのは、ヒーローについての情報を統制されてきたせいだ。
今回第三者からの質問で改めて感じた公安への違和感。
これは公安直属のヒーローであるホークスには言ってはいけない気がして、ぐっと喉に力を込めた。
「ふ〜。けっこう話したねぇ。」
「ほんとだよ啓悟！もう24時を回っちゃった…」
「大丈夫ですよお姫様。俺がしっかり家までお連れしますから。」
「んも〜。調子いいんだから。」
真夜中になって他人の目が無くなったことで歩く必要が無くなった私達は、いつかのように空路を使って帰宅する。
さっきまで冷たくて少しチクチクとしていた夜風が、ここではひんやりとしていて気持ちがいい。
「ん、Aあの香水ば使っとるとか。」
「ん！よく分かったね。その通り。」
「匂いは似とるっちゃけど、香り方が違うけんたい。」
「なるほど〜。そういう啓悟も、いつの間につけたの？」
「…やっぱり気付いとったとか。」
「もちろん。彼氏の匂いですから。」
「うわー、浮気したら秒でバレそうやな俺。笑」
「…ん？((ﾆｺﾆｺ」
「冗談やって。俺がA以外の女ば見る訳なかとばい。」
「そ、そう…？」
「あ！照れとう。」
「照れてない！！」
「ちょ！あんまジタバタすると落ちるばい。」
「…それは怖い、」
「じゃあ大人しく俺に“捕まって”てください。笑」
少し不服だったが、空の上なら啓悟が圧倒的優勢。
大人しく家まで連れて帰られることにした。
「着いた〜っ。」
なんだか懐かしい匂いで溢れる廊下で伸びをする。
「…Aはもう寝ると？」
「ん？いやまだ……あ、
その、良かったらさ。部屋…来る？」
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作者名：浦玖珂 咲希 | 作成日時：2023年4月3日 9時
