なぜか公安の最重要機密にされましたⅢ【ホークス】 (ページ29)

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雄英体育祭⑤ Your side ページ29

「ちょ！？緑谷くん止まっちゃったよ…？」

「……あれは…あの個性は…。」

緑谷くんは心操くんに何かを言われた途端、意志を失ったかのように場外に向かって歩き出した。つまりこれは…洗脳の類いだろう。

啓悟もそれに気が付いているようで、「あぁ、こりゃ終わったわ。」とばかりに画面から目を逸らして項垂れている。

というか……私の世代はこんな逸材なら絶対ヒーロー科に入るはず。それが普通科…もしかすると雄英内では意外と有り触れた“入試落ち”の子かもしれない。

そう思うとなんだかいたたまれない。

緑谷くんには申し訳ないが、せめてここで彼の雪辱を晴らしてあげて欲しいとも思った。

場外を示す白線までほんの数歩、もうダメかとその場の誰もが確信したはずだ。

「は！？え！？」

『シュ』と風を切る音がして、その場に砂埃の渦が立ち込めた。

《緑谷とどまったぁ！！！！》

『うおーーー！！！』という大きな歓声が上がる。

洗脳を……解いた？自力で…？

「す、凄い……！」

「……指、腫れ上がっとる。」

「えっ、」

緑谷くんの右手に焦点を合わせてみると、確かに人差し指と中指が赤く腫れ上がっている。青っぽい……骨折だろうか？

そして、見ればわかる、とても痛いはずなのに……それをものともせずに心操くんに正面から向かっていく。

この子は……。

『ぐっ！』『うぁあ！！』

揉み合いになりながら、両者場外へと相手を突き飛ばす。

ラインほんの手前でうずくまった緑谷くんの背中を……心操くんが押し出す。

あぁ、これで最後か…

《負けられないんだぁ！！！》

嘘、だろ？

緑谷くんが、ほんの隙を突いて心操くんを背負い投げた。

あの体勢で、にわかに信じ難い。

《心操くん場外！！緑谷くん2回戦進出！！！》

『うぉおおおおおーーー！！！』

先程よりも大きな歓声。

洗脳を自力で破り、流石はヒーロー科という体術で相手を場外に……

今年のヒーロー科、そして普通科は…あまりにも粒揃いだ！

「…？啓悟？」

「洗脳状態では動けん、さっきしっぽの生えた子がやられとった。あの子はなんか違う…。」

「やっぱりそうだよね、見事な背負い投げと逆転劇だった！」

あの子は凄い。

そして指を動かしただけであのパワー、もしかしてだけど体全体をもっと攻撃に使えば、オールマイトに匹敵する力が出せるのではないだろうか。

今年の1年生を見てみたい。

通形くんに言われた通り、近いうちに顔を出そう。