ダメじゃん Your side ページ20
「…！？啓悟！？！？」
電話を終え、そっと寝室の扉を開けると、扉の近くにうつ伏せで倒れる啓悟の姿があった。
「…うぅ、」
「どうしたの！？具合悪い！？」
一言断っておでこに触れる。
…熱い、今朝触れた時には気が付かなかった。
急いで啓悟を布団に寝かせ、奇跡的に冷凍庫で冷えていた氷枕を後頭部に当てる。
【39.1】
体温計が示した数字は中々見ないものだった。
高い。
これ以上上がれば救急車も覚悟だと思う。
公安の直営とはいえこれでも児童養護施設出身、後輩のお陰で少しは経験のある看病を本気で頑張ってみようと思う。
…確かこういう時は水分が要るんだよね。
ただ運が悪いことに、冷蔵庫には経口補水液の1本も無い。
お粥の材料を買いに行くついでに、少し近所まで行ってくるしかないか。
病人を1人家に残すのは忍びないが、少しの間だと鷹を括って家を出る。
こんな場所に住んでいるせいで忘れがちな鍵の施錠をしっかりと確認し、早足で駐輪場へ向かう。
最寄りのスーパーまでは自転車を使っても10分ほど掛かる。
初めてこの立地を呪いたくなった。
「(…急がなきゃ。)」
スーパーに着いたら最低限の材料とゼリー、ポカリをカゴに詰めて急いで会計を済ませる。
行きと同じく全力でペダルを漕いで家に帰る。
こうしている間に何かがあるのではないかと、嫌な想像ばかりが頭を過ぎった。
「…はぁ、はぁ、ただいま。」
別に誰かが返事をしてくれるのを期待した訳じゃない。
ただ自分で自分が帰ってきたことを確認したかっただけだ。
冷蔵庫に買った物を入れるのも忘れて、一直線で寝室まで向かう。
自分の心配とは裏腹に先程と変わらない啓悟の姿に心の底から安堵した。
「大丈夫…すぐに良くなるよ。」
息苦しそうに呼吸する啓悟の頬を撫でる。
やっぱり熱い。
「(…早く良くなりますように、)」
決して交換できないその苦しさを精一杯感じつつ、どうすればすぐに良くなるのかと必死に思考を巡らせる。
こういうのは療養すればすぐに良くなるのは知っている、でもそんなのどうでもいいくらいに心配で心がいっぱいだ。
…いや待て、療養…？
そうだ、そういえばそうだった。
「…サイドキックさんに連絡しないと。」
誰に言うでもなく呟いて、ニュースサイトを表示させているスマホの画面をメッセージアプリに切り替える。
ここでハッと我に返った。
「…私が連絡したらダメじゃん。」
ありがとう ホークス's side→←後輩 Your side
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作者名：浦玖珂 咲希 | 作成日時：2023年4月3日 9時
