ヒーロー？ ホークス's side ページ12
「は……？」
思わず出てしまった一言。
今日は約束の水曜日、俺は自分を押し殺してここ博多支部に来ている。
「…どういう事です？いくらなんでも現実味に欠くでしょうそれは。」
「そのままの意味というのが分かりませんか。Aさんの秘めていた個性は、それ程までに強大なものなんですよ。」
「…だからと言ってここまでキツいメニューを組むこと無いでしょ？流石に看過できない…。」
「これ程までに汎用性の高い個性は唯一無二と言っていいはずです。我々はそれに足る存在を育成する立場にある。合理的な判断です。」
「……っ、…ですが、条件があります。」
「条件？」
「Aさんの意向を尊重してください。今がどんな状況にあってどれだけ必要があったとしても。」
「……会長さんから聞いていた話と違いますね。私は貴方が平和のためならどんな犠牲も
「…それとこれとでは話が別だ。」
「……はぁ、分かりませんね。どうしてみんなしてそこまで彼女を守ろうとするのか。可能性を開花させ、人類の希望たる存在を新たな平和の象徴、もしくはその補佐役として立てようとしている事の何がそこまで気に食わないのか。」
「……そろそろ俺も聞き過ごせませんよ？」
「……こんな事のために公安上層部へ縦着きますか？」
「……っ、話はしまいです。あなた方がさっき言ったことを受け入れてくれないのであれば……その時はその時です。」
「……。」
「失礼します。」
……最っ悪だ。
目良さんはあんな事を言う人では無いと思っていたのに。
今じゃ公安上層部のほとんどが敵に見えてくる。
俺は本当にどうすれば良いのだろうか……
何が「平和のためならどんな犠牲も厭わない男」だ。
甚だ不快だ。
俺の中に彼女を犠牲にしてまで守りたいものなんて無い。
……いや待て、彼女以外の犠牲は…
……あぁ、本当に分からない。
俺は本当にヒーローなのだろうか。
こんな俺がヒーロー…
なぜだか溢れ出した涙を必死に拭いながら帰宅した。
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作者名：浦玖珂 咲希 | 作成日時：2023年4月3日 9時
