なぜか公安の最重要機密にされましたⅢ【ホークス】 (ページ11)

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コートホークス's side ページ11

「え……」

一刻も早く会いたくて、帰宅するよりも先にAの部屋のインターホンを押した。

そしたらバタバタと走る音がして、出てきたAは俺のコートを着ていた。

これは一体どういう状況だ……

「…そ、その、これは……」

顔を真っ赤にしながら上目遣いで俺を見つめるAがたまらなく可愛い。

今すぐにでも抱きつきたいという欲を必死に堪え、Aが言葉を紡ぐのを待った。

「そ、その……着てみたくて…」

「えっ？」

「……啓悟の服、着てみたかった。」

完結な一言、それでも抜群な破壊力だ。

ダメだ、俺の彼女……可愛過ぎる。

「なーんや！そげんことか！言ってくれたら全部貸したとに！」

「え？え？…ほ、ほんとに？」

「ほんとほんと〜！こげん愛らしか姿ば見れるんやったら最初っから喜んで貸したったい！」

「…よ、良かったぁ、」

ふにゃりと玄関に座り込むA。

こんな時に言うのもあれだが、どうしても……

「ねぇA、」

「ん…？」

「写真……撮っても良いと？」

───その後しばらく雑談をして、お互い自分の部屋に戻った。

Aの画像で一杯になったフォルダを見てニヤけていると、業務用のスマホが鳴った。

この時間に業務連絡は珍しい。

目良Aさんの訓練プログラムの改定を考えています。同じ博多支部で訓練を受けてきた貴方にも立ち会って欲しい。

構いませんか。

あぁ、そうだった。

Aはこれから公安によって、俺のような茨の道を歩まされる事になるんだった。

虫唾が走る。

でも俺に断るための上手い事情が無い。

、、、分かりました。2日後の水曜日で構いませんか?

目良はい。では2日後の水曜日、博多支部にてお待ちしております。

良いのだろうか。これは俺がAを一般人の道から外す手伝いをしているのと同じだ……

画面に映る照れくさそうなAの姿を見て、余計に心が痛むのを感じた。

そしてよくよく見ると私服…

Aの私服は今まで見たことがなかった。

自分のコートを着てくれていただけでも嬉しかったのに、この写真は二重の意味で嬉しさをギュッと閉じ込めた写真になりそうだ。

「(待ち受けってどうやって変えるんだっけ……)」

どうにも心がむず痒くなって、なんの気なしに戻って来たコートを羽織ってみる。

微かな温もりと、ほんのりと香るAの匂い。

不衛生なことは承知だが、これはしばらく洗濯したくないな。