難しい質問 Your side ページ1
「うわ、もう真っ暗やね。」
「ほんとだ。なんだかんだこうやって出歩くのも初めてで新鮮だなぁ。」
「それはそれは。ところで帰り道に公園ばあるんは知っとーと？」
「え？初めて知った。」
「そんじゃ、探検がてら行ってみますかぁ。」
「え？良いの？もうこんなに遅いのに…」
「ゆうて夜の10時よ？遅いって程の時間？」
「遅い…かも？」
「んな曖昧な。笑 ちょっとやし良いやろ。遠くば行く訳やなかし。」
「う、うん。」
「少しなら…」と思った私が馬鹿だった。
いざ来てみるとこの公園、予想に反して広いのだ。
「ちょ、全然ちょっとって感じの規模じゃなくない？」
「んー、そう言われてみれば？」
「んもー！ってかこの街本当に何でもあるね。凄いや。」
「そりゃあ！俺の地元やからねぇ。」
少し自慢げに鼻を鳴らす啓悟を他所に、鳥目な私は足元すらおぼつかない。
夜の公園なんて初めて来た。
いつもなら見えている景色が無いだけで、こんなにも不安になるものなのか。
足元に転がる枝一本一本が巧妙に仕組まれた罠に見えてくる。
「あ、あそこにベンチがある。」
「お、ナイス発見。ちょっとばか座って話そっか。」
「はーい！でもあんまり長居はしないからね？」
「へいへい。笑」
カラカラに乾いた落ち葉の先客を軽く
先程まで孤独を
肌を刺すように冷たい夜風と共に私達の体温を奪いにくるそれは、まるで冬の
とても不思議な感覚。
それは啓悟もまた同じだったんだと思う。
お互いに何を話すでもなくこの自然を肌で感じ、体感にして20分ほどが経っただろうか。
「Aに訊きたいことがある。」
「ん？」
「俺がAと初めて会った日、なんであげん恥ずかしか姿ば晒した俺んこと見捨てんかったと？」
頭の片隅にも無かったことを訊かれて、私はどう答えていいか分からなくなった。
「…ほら、普通は弱い奴に嫌気が差して離れて行ったりするけん…」
質問をしている側なのに、啓悟が悲しい顔をしているのは声色からすぐに分かった。
でも…やっぱり分からない。
啓悟の言う離れて行く人というのが、私の中では存在しないのだ。
「離れて行くって…そもそもそんな選択肢なんて無いよ。」
「…え？」
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作者名：浦玖珂 咲希 | 作成日時：2023年4月3日 9時
