検索窓
今日:10 hit、昨日:2 hit、合計:821 hit

《アキラ》強くなれ、強くあれ《狂気山脈後日譚》 ページ19

*



あの日から2年後。
静まり返った山奥に、2人の若者がスプレー缶を持ってやって来る。


「いやーいい場所見つけたなw」

「ここには人はいないし、思いっきし俺達のアートが楽しめるからなぁ」

「そうそう。こんなボサボサ山に俺達が価値を与えてやれるんだか……いっ、てぇ!?」


若者の1人が足元を見ると、そこには1匹の子ダヌキがいた。足元の傷から察するに、足を噛まれたのだろう。
その若者は持っていたスプレー缶を使い、そのタヌキの顔に塗料を塗る。


「おらっどけクソタヌキ」

「うわひでぇことすんなぁw」

「ったくふざけんなよー。さてと、早速やるか」

「そうだな、カラフルに染め上げてやろうぜ!」


そうニヤリと笑みを浮かべる男の頬に、突如切り傷が現れる。


「……へ、ぁ?」

「なっ、どうした!?急に頬が切れて──」


そうやってもう1人の男が自分の頬を指差した瞬間、彼の足元の地面にひとつの斧が突き刺さる。あまりにも大きな衝撃だったものだから、男は腰を抜かしてその場に座り込む。


「っ、お、斧……!?」

「一体どこから……」

「……てけ……」

「「はっ?」」


2人が一気に声のする方を向くと、そこには熊の皮を被った、背の高い人型の生物がいた。


「……てけ……出てけ……出てけ……!!」

「ひぃっ!?」

「やっ、やべぇっ、逃げるぞっ!!」


2人は持っていた荷物を全て投げ出し、そのまま山から逃げ去っていく。人型はその姿を見届けると、熊の皮を脱ぎ去って大きなため息を吐く。人型は、大柄な女性だった。

その女性に「おい!」と声を掛ける男性がいた。
その男性はイノシシの頭を持ち、もう片方の手で女性の頭にゲンコツを振り下ろした。


「いっ」

「アキラ!!誰も傷つけんなっつったろ!!」

「だってアイツら!」

「だってじゃねぇ!何回言ったら分かる!お前の力は傷つける為だけにあるんじゃねぇって!」

「っ……」


悔しそうに握り拳を作るアキラ。
その姿を見かねた男性は、視線を地面に戻して、どこか辛そうな表情を浮かべた後、表情も見せずに歩き出した。


「……戻ったら猟銃の特訓だ」

「……おう」


強くならなくては。
強くなければ、守りたいものも守れない。
それは、弱肉強食のこの世界には、あまりにも当たり前で見落としがちなものだった。

そうしてかつて英雄と呼ばれた彼女は、また山奥へと消えた。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している



←《ミハル》ほのぼのティータイム?《パフェを作って!後日譚》



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
4人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:イカノシヲカラ | 作者ホームページ:無し  
作成日時:2023年6月7日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。