《透空》気のせい……?《さいきょうにしろいへや後日譚》 ページ15
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……あのおかしな夢から3日が経った。今日は彼の王座防衛戦がある日であった。
未だ楽屋でダンベルを使い簡易的なトレーニングをする透空に、既に試合を終えた後輩のレスラーが透空に話しかける。
「はぁっ、はぁっ、そろそろっすね、風見さん!!ベルト防衛、頑張って下さい!!」
「ん、お疲れ様。そうだね……この試合勝てたら……確か2回防衛したことになるのかな」
「もー、3回っすよ風見さん!」
「あれ、そうだっけ。あはは……」
疲れてるんじゃないですかー、と冗談めかして笑う後輩レスラーに、透空は苦笑いを返す事しか出来なかった。
あの夢のせいでなかなかぐっすり眠れず、疲れが溜まっていたのだろう。……枕元に置いていたサングラスのせいとも言えるが。
そんなことを考えていると、会場スタッフから「風見さん、そろそろ出番です。準備をお願いします」と声がかかる。
「あぁ、もう僕の出番か。行ってくるね」
「はい!応援してますね!!」
彼の象徴でもあるヒーローのような蒼いマントを羽織り、黄金に光るベルトを肩に担いで入場する。
聞きなれた自身の入場曲に合わせ、手拍子が、声援が飛び交う。
中には自身の顔がプリントされたTシャツを着ていたり、自作のうちわを掲げる者もいる。
そんな中、夢の中で出会った茶髪の女性にそっくりな女性と目が合う。女性は透空を見つけると、嬉しそうな笑顔でブンブンと手を振る。
「…………」
手を振り返すことも、笑いかけることもできず、彼はそのままリングへと向かう。
……多分、似てるだけだ。そうだ。気のせいなんだ。
そう自分に言い聞かせながら、ゴングの合図で対戦相手と取っ組み合いを始めた。
ちなみにだが試合には勝てた。マイクパフォーマンスではすごい噛んだ。
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