《幸》まだ秘密です《VOID後日譚》 ページ11
*
「…………」
組織の施設で、何も無い天井を見続ける。
そのアンドロイドは何をするでもなく、ただ座り込み、虚空を紫色の瞳で捉えていた。
アンドロイドの名は一色 幸。型番はX000。X000は生まれながらにこの名を持っている訳では無い。それにその名を与えたのは、約1年前から行動を共にする相棒、空知 茜という女性だ。
彼女と出会ったのにはかなり複雑な事情があった。決して偶然ではなく、かと言って必然でもない。そんな出会いだった。
そもそものところ、「X000」という存在自体が当人達の複雑な事情が絡まりあい、出来上がったものであった。
……それは始まりのアンドロイドであり、人類の希望だった。
しかし、そんな事幸には関係がない。それよりも、幸は自分が生まれる前の者が気掛かりであった。
誰かの犠牲の下に、「それ」は生まれたのだ。
「っ……」
「あ、いたいた。どうしたんだーそんな辛気臭い面して」
「あ……茜様……」
幸の元に、茶髪の人間の女性がやってくる。彼女が空知 茜だ。
茜は幸の隣に座り、いつもの優しく明るい笑顔を見せる。
「……その、まぁ……色々と、考えてまして」
「……あの事か」
「…………」
すっかり黙りこくり、頷く。その暗い表情の幸に、茜は優しく頭を撫でた。
「あ、茜様……」
「大丈夫だ、大丈夫……私は、幸の気持ちが全て分かる訳では無い。でも、いつだってそばにいてやる」
そう言って、茜はまたにこりと笑ってみせた。
……幸は、彼女のそんな所が好きなのである。
「……ありがとう、ございます」
「へへ、良いってことよ」
「……やっぱり、私……その、あ、茜様のことが……」
「おー?」
「……いえ、まだ秘密です」
「えぇっ、そこまで来て言わねぇのかよ!?」
「い、いつか言いますから!!」
「ふふっ、そうか。じゃあ待ってるからな、幸」
「……は……はい……っ」
……申し訳ございません、茜様。
まだもう少しだけ……秘密って事で許して下さい。
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