《飛翔》スープの味と流星群《毒入りスープ後日譚》 ページ2
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冬の夜7時、静かな山の上。ソロ用の小さなテントの前、組立椅子に腰掛けて、先程作ったコーンポタージュのインスタントスープを一口飲む。
空を見上げるとたくさんの星が見え、彼はほう、と白い息を吐く。
「……綺麗だなぁ……」
スープの優しい甘味を噛み締めるように味わい、つぶやく。
……いつか飲んだあのスープの味は、もう忘れてしまった。いや、あの気味の悪い感覚を記憶から消したくて、忘れるようにしたのだろうか。真相は定かでは無いが、覚えていない。
そもそも、あれが現実なのかも分からない。もしかしたら……全て夢なのかもしれない。でも、どこか現実であって欲しいと願う歪な自分もいる。
あぁ、馬鹿だなぁ僕。そう自虐気味に笑う飛翔。
その色の違う両目に、一筋の光が映り、それに続くように次々と光が流れる。流星群だ。
「あっ……これ……この時期だと、オリオン座流星群、かな……ふふ、今日ここに泊まって良かった……」
……そういえば、流れ星が消えぬうちに3回願い事を唱えると、それが叶うという話があったな。まぁ、迷信に近いものだろうけど。それでも、流れ星を見るとつい願い事を唱えてしまうのが彼の癖だ。
……その願いはやれ「人と話せるようになれますように」だの、やれ「明日は綺麗な星が見れますように」だのと、案外自分のための願い事が多かった。
しかし、今日は少し違った。
「……あの2人と、女の子が……どこかで幸せに生きていますように」
……あぁ、やっぱり僕は馬鹿だ。こんなに長いと、1回言うまでにもう星は消えてしまうでは無いか。
くすり、と自分を嘲笑するように肩を竦めて口角を上げ、またインスタントスープを一口飲んだ。
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